原爆の聖地で大ハシャギ、酷すぎるお土産品、募金で原爆投下ショー…日本人男性がアメリカで見た“呆れた光景”【映画バービー・キノコ雲騒動の闇】

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 一見すると、タンクのようなものに男性が跨がり、拳を突きあげているだけの写真に思える。だが、実を言うと男性が乗っているのは原爆なのだ。通称「ファットマン」。1945年8月9日、長崎市に投下された。写真は戦後に生産された数十発のうちの1発で、安全処理化はされているというが、正真正銘の本物だという。

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 7月21日、アメリカでバービー人形をテーマにしたコメディー映画「バービー」と原子爆弾の開発者ジョン・ロバート・オッペンハイマーの伝記映画「オッペンハイマー」が公開された。両方の映画を見ようという運動をきっかけに、「バーベンハイマー」という造語が誕生した。

 その際、SNSで“悪ふざけ”が横行した。オッペンハイマーとバービーが原爆の炎の中でポーズを決めたり、バービーの髪型がキノコ雲になっていたりという冗談では済まされないパロディ画像が作成され、ネット上で拡散されたのだ。おまけに「バービー」の公式X(旧Twitter)が問題画像に好意的な評価を下し、日本で批判の声があがった。

 日本で批判の声が高まっても、アメリカでは「バービー」も「オッペンハイマー」も大ヒットしている。CNN.co.jpは8月7日、「『オッペンハイマー』興収5億ドルを突破、第2次大戦映画として最多」との記事を配信した。

 記事によると、「バービー」の世界興行収入は10億ドル(約1420億円)を突破。「オッペンハイマー」も5億ドル(約710億円)を超え、制作したユニバーサル・ピクチャーズにとっては《第2次世界大戦を舞台にした映画の興行収入としても同社史上最多》になったという。

 日米の間には原爆投下を巡って大きな見解の相違が存在する──冒頭で紹介した写真も、まさに原爆を巡る日米のギャップを雄弁に物語る1枚だと言えるだろう。

「俺たちの原爆はすごいだろう?」

 撮影場所はアメリカ・ニューメキシコ州のトリニティ・サイト。1945年7月16日、ここでオッペンハイマーたちは、ファットマンによる核実験を行った。アメリカにとっては歴史的に大きな意味を持つ“聖地”であり、1965年には国定歴史建造物に、66年には国定史跡に指定されている。

 写真を撮影したのはトリニティ・サイトの観光ツアーに参加した日本人男性である。訪れたのは2009年のことで、当時の様子を振り返ってもらった。

「私が訪れた時、トリニティ・サイトは年に2回、4月と10月の第1土曜日に一般公開されていました。私は以前から『アメリカ人は太平洋戦争をどう受け止めているのか』に関心があったので、有料ツアーへの参加を決めました。ただ、たどり着くまでが大変でした。成田からロスへ飛び、さらに飛行機を乗り換えてツアーの出発地であるアルバカーキを目指します」

 東京都の約4倍の広さを持つ陸軍ミサイル実験場の一角にトリニティ・サイトはある。アルバカーキからはツアーバスで約2時間という距離だ。

「私たちツアー客は2台の観光バスで到着しましたが、全米から観光客が自分の車やキャンピングカー、バイクなどでやって来ていました。盛況で参加者は4000人くらいでしたが、アジア系は私だけだったので非常に目立ちました。すぐに『どこから来た? 日本? よく来たな!』と大歓迎されました。『自分たちが作った原爆で、広島と長崎では多数の死傷者が出た』ことを意識しているようには見えません。彼らは原爆に『当時、アメリカの技術力が世界最高だった証拠』とのイメージを持っているようです。そのため『日本人も見に来たか。どうだ、俺たちの原爆はすごいだろう?』とむしろ誇らしげでした」

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