「タワマン40階」にも“ゴキブリ”が出現する驚きの理由 フマキラー「虫博士」が教える最新撃退法

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粘着剤をすり抜ける賢いG

――通常の殺虫剤スプレーのメリットは何ですか?

「超凍止」よりも、手に取りやすい価格設定であることと、薬剤は少しでもかかれば殺せる点です。また、予防にも使えます。床にかけておいてもいいですが、冷蔵庫の横や光の当たらない場所に噴射しておけば、2週間から1ヶ月は効果が持ちます。しかも、クロゴキブリの場合、卵についた殺虫成分で孵化してきた幼虫も駆除できる場合があります。注意してほしいのは、殺虫成分のピレスロイド系は、光が当たると分解してしまうため、光が当たる場所に撒いてもすぐに効かなくなることがあります。

――いわゆるゴキブリホイホイのような「粘着剤」タイプはどう使えばいいのでしょうか?

 流しの下のように、食べ物があるところではスプレーは使えないので、粘着剤型が有効です。このタイプに関して、「昔はたくさん獲れていたが、最近は少ない」という声も聴きますが、最近はゴキブリの数自体が減っているので獲れないことが多いのです。さらに、ゴキブリが様々な対策に慣れてしまったことも影響しています。以前よりも“賢い”と言いますか、たとえ容器の中に入っても、粘着剤が付いた瞬間に脚を引っ込めて、すり抜けたりもするんです。そのため、最近は、背中側に粘着剤が付くタイプも登場しています。

ゴキブリ除去の未来

――佐々木さんのラボではゴキブリを飼っていると伺いましたが、どれくらいいるのでしょうか。愛着が湧くものですか?

 クロゴキブリだけで10万~20万匹はいます。さすがに愛着は湧きませんが、汚いとは思わなくなりましたね。エサと住処がきれいなところで飼っているので、そもそも汚くありません。菌を持っておらずきれいなので、手でつかめます。一方、外のゴキブリはジメジメと湿った場所や、下水といった汚いところに生息しています。実際に食中毒の菌を持っていたりもするため、直に触ってはいけません。

――ゴキブリ除去はどこまで進化できますか?

 今後、遺伝子をいじる、とかはありえますね。蚊などは、感染症の流行を抑えるために遺伝子を組み替えた「ジェネラルモディファイ蚊(GM蚊)」も研究されているみたいです。

 また、具体的な商品では、スプレーの噴射方法なども研究が進んでいます。ただ、薬剤そのものはあまり変わっていません。昔に比べると、有効な薬剤が掘りつくされた感がありますね。以前は毎年のように、新たな有効成分が登場しましたが、今は10年に一つといったところです。そういう意味で、殺虫剤の進化は「どのように使うか」というところに来ているのではないでしょうか。アメリカでは、飛んでいる虫が“蚊かどうか”を識別したうえでレーザーを当てる研究もあります。たとえば、大きいゴキブリと確定したら殺虫剤をかけるIT技術などはあり得るかもしれませんね。

中川淳一郎(なかがわ・じゅんいちろう)
1973(昭和48)年東京都生まれ、佐賀県唐津市在住のネットニュース編集者。博報堂で企業のPR業務に携わり、2001年に退社。雑誌のライター、「TVブロス」編集者等を経て現在に至る。著書に『ウェブはバカと暇人のもの』『ネットのバカ』『ウェブでメシを食うということ』等。最新刊に『よくも言ってくれたよな』(新潮新書)。

デイリー新潮編集部

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