4千回の実地調査で見えた「良い高齢者施設の見分け方」 オススメの11施設をプロが紹介!

ドクター新潮 ライフ

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介護側の負担を軽減する「フィンガーフード」

 それとは対照的に、高齢者は少しずつ日常的な動作が衰えていく。記憶の曖昧さが増し、理解力や判断力が下がっていくのだ。成長と衰えという段階にある両者は、ともに生きるために周囲の助力が必要だ。とくに終末期の高齢者の介護は、産まれたばかりの赤ん坊の世話に通じるといえるだろう。

 また、テキサス州フォートワース市のジェイムズ・L・ウエスト認知症ケアセンターでは「フィンガー・フード」という概念を教わった。一般に認知症患者は落ち着きがなく、決まった時間に食事をし、時間内に食べ終えることは困難な場合が多い。その点、片手でつまんで頬張れる程度の大きさにカットしたサンドイッチやピザなら、遊びながらでも、何かしらの作業の片手間でも食べることができる。前もって必要な人数分用意しておけば、遊びながら食べ、食べながら遊ぶ幼児のような感覚で好きな時に食事ができる。こうした工夫は、介護側の負担も大いに軽減することにつながる。

 では、受け入れる側の施設はどうだろう。前述の通り、公的には10種以上に分類されており、それぞれの施設が「介護付き」「サービス付き高齢者向け住宅」「住宅型」という具合にパンフレットなどで特色を表示している。とはいえ、それを読んだだけでは実態を理解することは不可能だ。だからこそ、高齢者のライフステージのうち、入居者がどの段階にあるのか、そのステージに適した施設であるのかをきちんと判断することが重要となる。

 参考として、各ステージの高齢者に適した施設のイメージを図にまとめた。

12の判断ポイント

 高齢者施設には、国や各自治体、あるいは業界団体が定めた規制や指針がある。言うまでもなく、これらは最低条件で、基準を満たしていれば優良な介護とサービスを得られるという単純なものでもない。

 施設と入居者との相性を見極めるには、事業者の介護事業や高齢者に関する考え方や理念はどんなものか、また、現場で働くスタッフの待遇や職場環境といった要素も加味した複眼的な視点が必要となる。

 例えば、特養において必要とされる人員の数は、要介護者3名につき有資格の常勤介護者が1名とされている。しかし、業界内で優良と評されている特養では、これより手厚くスタッフが配置されていることも多い。経営者の自主的な判断によるものだが、これなどは入居者だけでなく、家族の理解と安心、信頼を得る努力をしている証拠といえるだろう。

 私が施設を優良と判断する際は、以下に挙げる12のポイントを基準にしている。これまで4千回以上行ってきた高齢者施設の実地調査をもとに、独自に見いだした法則や共通点を整理したものだ。

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