一瞬でガレキになった歴史都市…トルコ大地震から半年、被災地を「食べ歩く」

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復活したデザートとケバブ

 そんな廃墟を暗い気持ちで歩く中で、少し明るいニュースにも出会えた。昨秋に何度か通って、どろっとしたトルコ・コーヒーを楽しんだカフェが、場所を移転して営業を再開しているというのだ。

「アファン」という、アンタキヤ旧市街の店。木材をふんだんに使った古ぼけた建物で、広い中庭の壁に緑のツタがびっしりと生育しているのが印象的だった。

 当時の場所に行ってみたところ、建物は残っていたが、瓦の屋根がぐにゃぐにゃっと崩壊し、大破した状態だった。

 地震後の新店舗は、アンタキヤ中心部の南方数キロの幹線道路沿いにあった。アンタキヤ周辺で営業している二軒のホテルのうちの一軒のすぐ横。今後、アンタキヤの中心部になっていくのでは、と市民が噂している住宅街だった。

 このカフェの名物は、ユニークな冷たいデザート。「ハイタル」と呼ばれていた。ガジアンテップのシリア人街で、「ハイタリーヤ」と呼ばれて人気メニューだったものと同種。ブラマンジェを下敷きにアイスクリームを載せシロップをかけてある。ここのはシロップが鮮やかなピンク色。ローズシロップを使っているのだ。

 緑地帯の土の上に、イスとテーブルを置いただけの簡素なカフェ。寡黙な老店主が、プラスチックのケースに鮮やかなピンク色の「ハイタル」を作って出してくれた。この店主、昨秋には店内の帳場に座っていたが、今は1人でキッチンに立って黙々とコーヒーやデザートを作っていた。心中、いかばかりだろうか。

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