織田裕二に適度な塩対応 伊藤沙莉が頼もしいドラマ「シッコウ!!」

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 来年は朝ドラヒロインも務める伊藤沙莉が大活躍。子役時代から「ひとりだけプロがおる」と感じさせた沙莉は、既にドラマでも映画でも主演作はある。ただ、ゴールデン枠の連ドラでは初主演だそうで。しかも、あの織田裕二を従えて。UZが脇だってよ! ということで密かに楽しみにしていた「シッコウ!!」の話だ。

 裁判所の執行官なる職業がどんな仕事なのかをわかりやすく解説しつつ、沙莉&UZの凸凹バディを愛でる内容に。おじさんと若い女の組み合わせはよくあるし、勘違いからのけんか口調スタートにやや不安を覚えたものの、ふたりが対等な感じがして好印象・好発進。

 UZは債権者の申立書に基づき、不動産の明け渡しや動産の差し押さえを強制執行する執行官。ただし、犬が死ぬほど苦手。個人宅へ調査&執行に出向くも、犬がいると仕事にならない。

 そこで、執行先にいた犬好きの沙莉をとっつかまえて、執行補助者(犬担当)として、協力を依頼。沙莉は既に職を2度も失い、ボロアパートの家賃すら危うい生活、犬と関わる仕事を求めていたので好都合。UZはボディガードとして沙莉を採用、沙莉はUZを守るというよりは、執行で環境が変わる不憫な犬たちを守る目的で協力することに。

 もちろん、沙莉の報酬の額や出どころは気になるし、執行官の裁量で補助者を採用できるのかと驚いた。そもそも執行官自体が国家公務員なのに出来高制っつう世知辛い待遇も知らなんだ。

 抑えに抑えた柔和っぷり、真っ白で本数が多そうな歯を見せて、犬にビビりまくりのUZがいい感じだし、男(おじさん)だらけの環境での沙莉も、こびず流されず、眉をひそめて適度な塩対応。いいバディだと思う。

 物語としては、強制執行の債務者の背景を描きつつ、事情もくんであげるハートフルな内容に。私自身は債務者にまったく同情できず。家賃滞納や借金踏み倒しで困っている債権者側に同情しちゃうんだよな。己の思いやり欠如と狭量を再確認。

 UZが所属する地方裁判所の執行官や執行補助者の面々も、思わず絵に描きたくなる布陣なので絵の上段一列に並べておきました。劇中で沙莉いわく「さすらったり、はぐれたり、はみだしたりしてそうな」面々ね。日本のドラマ界を40年以上陰ながら支えてきた5人の功労者って感じだよね。前回の原稿でテレ朝をディスったけれども、このキャスティングを見る限り、テレ朝に良心のかけらはまだある。

 執行補助者で運送担当のマッチョな笠松将と、元銀行員で執行官室事務員の中島健人が恋愛要員だけに終わらないことを祈る。沙莉は犬にしか興味ないしな。

 過去、沙莉は抜群の女友達感を発揮してきた。ぼやっとしたお人よしのヒロインに突っ込んだり、突き放したり、毒づいたり、支えたり、励ましたり、伊藤沙莉。今作ではその重要な役目を担っているのが親友役の駒井蓮。口が悪いというが、言っていることは至極まっとうで、語録を作りたいくらい正論。ともあれ、険しい道を着実に登ってきた沙莉、頼もしい限り。

吉田潮(よしだ・うしお)
テレビ評論家、ライター、イラストレーター。1972年生まれの千葉県人。編集プロダクション勤務を経て、2001年よりフリーランスに。2010年より「週刊新潮」にて「TV ふうーん録」の連載を開始(※連載中)。主要なテレビドラマはほぼすべて視聴している。

週刊新潮 2023年7月27日号掲載

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