父にも母にも愛人が…オープンマリッジな家庭に育った男性の告白「親子関係がそもそも普通じゃなかった」

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 通常、結婚後の恋愛は「いけないこと」とされている。結婚している人との恋愛も「いけないこと」だ。刑法上の罪ではないが、世間からのそしりは免れないし、民法上、損害賠償が発生することもありうる。

 ただ、そこは「価値観」の問題で、不倫をいけないことだと思っていない人もいる。結婚後に本当に好きな人に出会うこともあれば、こっそり恋愛してしまうこともあるだろう、人間だものと感じている人も実際には少なくない。自身のパートナーや子どもを傷つけるのがいけないことであって、恋愛そのものがいけないわけではないとする人も。考え方はさまざまだ。

「友だちの家と何かが違う」

「今になってみると、僕はけっこう特殊な環境で育ったんだと思います。不倫がいけないという感覚がなかったし、そう思ったら自分の両親を否定することになってしまう。人は自分を止められないことがある。世間一般からはズレていますよね。妻を傷つけていたのかと考えると胸が痛みます」

 そう話してくれたのは、刈谷俊太朗さん(40歳・仮名=以下同)だ。彼は今、妻のことを思いながら、ひとりで生活している。

 俊太朗さんの両親は、公言こそしていなかったが「オープンマリッジ」を地でいく夫婦だった。ふたりとも仕事をもって同居していたが、婚姻届は出していない。戸籍上、俊太朗さんは母の籍に入って、父には認知されているという形だった。

「小学生のころから、うちは友だちの家と何かが違うとは感じていました。母方の祖母が同居していて、僕は祖母に育てられたようなもの。ただ、父も母も早く帰ってくることはあったし、家族全員で食事をすることも週の半分くらいはありました。両親は仲がよかったけど、なんていうのかな、ふたり揃っていると僕の親というよりは、恋人同士にしか見えなかった。子ども中心の家庭ではなく、ふたりがいつもイチャイチャしているような家でした。世間の親が淡々としているのが不思議だった」

 長じるにつれ、夫婦仲はいいのに、さらに父は外で男として振る舞い、母は女として生きているとわかっていった。それを嫌悪したことはない。そういうものだと感じていた。彼自身、子どものころから「ひとりの人間」として親から扱われていたので、自分と親との距離感がつかめていたようだ。

「だから高校生のころ、父から愛人を紹介されたときも取り乱しはしなかった。薄々、わかっていたような気がしますね。愛人さんはおもしろい女性でした。高校生の僕に『私はきみのおとうさんが大好きなのよ。あなたのおかあさんもおとうさんが大好きでしょ』と。彼女は母とも顔見知りだったようです」

 10代の繊細な心は傷つかなかったのかと心配になるが、彼は「そこは育ち方というか、育てられ方の影響でしょう」と苦笑する。前後して、母から恋人を紹介されたこともある。

「母はもうちょっとマイルドに『私の仲良しのお友だち』という触れ込みでした(笑)。当時、両親とも40代半ばでしたが、母の愛人はかなり年下でしたね。20歳くらい離れていたんじゃないでしょうか。でも彼のほうが母に惚れ込んでいる感じだった。おかあさん、かっこいいと思った記憶があります。親子関係がそもそも普通じゃなかったんだと思う」

父に「ひとりじゃダメなのか」と聞くと…

 彼が「普通の親子関係」を知ったのは、大学に入ってからつきあった同級生女子の家に遊びに行くようになってからだ。何度も行くうちに、彼女が両親に甘える様子や、両親がひとり娘をこの上なく愛し保護している感じが伝わってきた。夫婦はべたべたしないし、夫婦で娘に相対している。だが、俊太朗さんの家ではいつも、両親が顔をつきあわせてしゃべっており、彼は「父と僕、母と僕という関係性はあったけど、“両親”と僕という関係は考えたことがなかった」という。

「しかもお互いに浮気というか、他につきあっている人はいるのに仲がいいわけですよ。父に『おかあさんと彼女、おとうさんの気持ちの中ではどう違うのか』と尋ねたことがあるんです。父は『おかあさんは特別な人、彼女は恋する人だよ』と言う。母にも聞いてみたけど、同じようなことを言ってましたね。ひとりじゃダメなのかと聞くと、父は『きみにもいつかわかるよ。人間はずっと同じところで立ち止まってはいられないんだ』って。意味はよくわからなかったけど、両親は変わった人たちだと僕の中で位置づけを決めました」

 両親とも親ぶらなかったから、何でも話すことができた。ただ、ふたりとも最後は彼自身が決めるよう促した。受験する大学も、将来の道も。考えてみれば小学生のころから、決定はすべて自分でしてきたと思い当たった。

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