人工甘味料で「脳卒中」「糖尿病」リスク、WHOが警鐘 トクホ食品にも要注意

ドクター新潮 ライフ

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「DNA損傷」

 先の大西氏によると、最近も人工甘味料の問題についての研究報告が相次いでいるという。

「ノースカロライナ大学とノースカロライナ州立大学の研究者による今年5月の報告では、人工甘味料スクラロース(厳密にはスクラロースに含まれる化学物質、スクラロース-6-アセテート)が、DNA損傷やがんを引き起こす可能性を指摘しています」

 また、昨年アメリカの科学誌「Cell」ではスクラロースとサッカリンに関する研究が報告された。

「それによると、スクラロースとサッカリンが、血糖値の上昇を引き起こすだけではなく、腸内の細菌叢(さいきんそう・マイクロバイオーム)の変化を生じさせることが示されています。これまで人工甘味料は体に何の影響も与えず、体を通過するだけ、と信じられていましたが、実際はそうではなかったのです」(同)

 さらに、「天然由来」として比較的安全と思われてきたステビアに関しても、こんな気になる報告が。

「アメリカのクリーブランドクリニックの研究者らによる今年2月の報告では、米国と欧州の4千人以上を調査し、ステビアなどに使用されるエリスリトールが、血栓、脳卒中、心臓発作、早期死亡に関連していることが示されました」(同)

 こうした研究報告があるため、今回、WHOはステビアも俎上に上げたのかもしれない。

甘味料の業界団体は反論

「今回の発表はインパクトが大きいです。何しろ、私のように個人的に危険性を指摘しているケースや、研究機関による報告ではなく、WHOによる勧告ですからね」

 と、北海道・札幌にある「くにちか内科クリニック」の國近啓三院長は言う。

「もちろんWHOが絶対に間違わないとは言いませんが、業界団体などからの大きな反発も覚悟の上で勧告に踏み切っているはず。かなり慎重にエビデンスを固めるなどしっかり調べてから出してきたとみていいのではないでしょうか。清涼飲料水やガムなどの包装食品のメーカーにとっては大打撃で、まさに死活問題だと思います」

 実際、先の日経新聞の記事によると、甘味料の業界団体はすでにWHOの指針に反論しているといい、

〈国際甘味料協会は低カロリーやゼロカロリーの甘味料が「体重管理に役立つと認めないことは公衆衛生上の不利益」などとする見解を公表した〉

 中戸川氏(前出)が言う。

「今回のWHOの発表が、人工甘味料メーカーや食品メーカーにとってかなり肝を冷やすものだったのは間違いない。これまで砂糖vs人工甘味料という構図があり、WHOは砂糖の取りすぎをずっと批判してきたので人工甘味料サイドは喜んでいた。ところが今回、自分の所にも矢が飛んできたわけですから、その衝撃は計り知れません」

 人工甘味料は清涼飲料水だけではなく、ヨーグルトやチューハイや菓子、スーパーで売られている総菜や調理済み食品、タレ類まで、ありとあらゆるものに使われている。

 特筆すべきは「食後の血中中性脂肪の上昇を穏やかにする」などと謳う特定保健用食品、いわゆるトクホの商品にも人工甘味料を使用しているものがあることだろう。具体的には、「コカ・コーラプラス」と「キリン メッツ コーラ」と「ペプシスペシャル」。これらの“トクホコーラ”にはいずれも複数の人工甘味料が含まれている。肥満予防のために飲んでいたこれらの商品で糖尿病や脳卒中になるリスクが上がるとは、悪い冗談以外の何物でもない。

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