血栓を放置すれば「急性心筋梗塞」や「脳梗塞」も…40代で生活習慣病のある人がやっておくべきことは

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軽度から重度まで、血栓が起こす病気の数々

 飛行機のエコノミークラスなど、動きが制限される狭い座席に長時間座っていると、ふくらはぎや太もも周辺に腫れや突っ張りが生じ、痛みやだるさなどの症状に襲われることがある。足を動かさないことで血流が悪くなり、足の深い静脈に血栓が生じてしまう「深部静脈血栓症」である。

 この血栓が剥がれて肺動脈を詰まらせることがある。これを「肺血栓塞栓症」という。俗に「エコノミークラス症候群」と称されるものだ。

「血栓は生じる血管の場所によってさまざまな病気を引き起こします。肝臓から流れ出る血液を運ぶ血管(肝静脈など)が塞がると、指定難病の『バッド・キアリ症候群』。肝臓や脾臓の血管に生じると、激しい痛みが突然発生し、胃潰瘍、痛風、腎結石といった他の合併症などを起こすこともあります」

 血栓によって引き起こされる病気でとくに危険なものは、冠動脈や脳動脈が詰まって心臓や脳の組織が壊れる「急性心筋梗塞」や「脳梗塞」。どちらも50代から急増し、厚生労働省の調査(「患者調査」2020年)によると、それぞれの患者数は200万人近くにのぼる。死因も上位(同調査2022年)で、ガンに次ぐ2位(心疾患)と3位(脳血管疾患)。しかも、急性期を切り抜けても、心不全や言語・運動障害など、厄介な後遺症が発生することも多い。

 血栓はこのように、実に多種多様な軽重の病気を発症させる。では、血栓から逃れるすべはあるのだろうか。

「人体はよくできており、血管内に血栓が出来てもそのままにしておきません。体内では、出来始めた血栓を溶かそうとする繊維素溶解のメカニズムが作動します。しかし、このような防御作用はごく初期のみに有効です。大きくなった血栓は血栓溶解薬を注射して溶かすか、動脈硬化病変諸ともにバルーンカテーテルで広げるしかありません」

 いまからでもできる自助努力は?

「食生活を中心とする生活習慣病の予防や改善です。とくに40代で生活習慣病のある人は、かかりつけの医師でもいいですから、心臓や脳の画像検査などを行っておくこと。今の診断学はかなり進んでいるので、危険を予知できます。単なる健康診断で安心せず、一度は専門医の診察や脳や心臓を含めた人間ドックを受け、身体の異常を早めに見つけて治療することが、健康長寿の大原則です」

取材・文/段勲(ジャーナリスト)

デイリー新潮編集部

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