楽天「石井一久体制」で暗黒期に突入か…他球団から大量選手をかき集めた“大きすぎる問題点”

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石井氏にはない星野監督の“人心掌握術”

 ちなみに、楽天球団がGM職を置いたのは参入初年度のマーティ・キーナート(1年目の4月には退任)以来だが、実質的にGMの役割を果たしていたのが2011年から指揮を執った星野仙一監督だ。星野氏も中日の監督時代から石井氏と同様に多くの選手を入れ替えて結果を残しており、楽天でも2013年には球団創設初の日本一に輝いている。

 仁村徹や佐藤義則ら、力のあるコーチを起用するなど、スタッフを招聘する手腕が光っていた星野氏と比べて、石井氏は、他球団で活躍した選手を集めることはできても、現場でそれを生かす首脳陣を揃えられなかったといえる。

 もうひとつ、星野氏にあって石井氏にないことが“人心掌握術”だ。星野監督は生来の「人たらし」と言われていたが、それは球団オーナーなどの幹部だけにとどまらず、“全方位”にわたっていたという。

「星野さんが選手の奥さんの誕生日に『いつもありがとう。星野仙一』というメッセージを添えて花を贈っていた話は有名ですが、楽天が日本一になった時には全スタッフに対して、ポケットマネーから金一封を贈ったそうです。昔かたぎなやり方ですけど、プレーする選手も裏方のスタッフも人間ですから、心配りによって働きが変わってくる部分もありますよね……。一方、石井さんは、基本的に表情をあまり変えずに飄々としているため、何を考えているのか分かりづらい。そう周囲の人も感じていると思います。特に、いわゆる“外様選手”が多いチームで結果を残そうと思ったら、星野さんのような分かりやすいキャラクターの方がまとまりやすいのかもしれませんね」(楽天の球団関係者)

若手が活躍できない“悪循環”も

 大胆な補強策が返って、チームの将来に暗い影を落としている現状もある。他球団から選手をかき集めたことで、生え抜きである若手選手の抜擢が遅れていることだ。投手は内星龍(2020年6位)、野手は安田悠馬(2021年2位)、小郷 裕哉(2018年7位)にそれぞれ開花の兆しが見られる一方で、それ以外で目立つ若手は、立教大出身のルーキーで右腕の荘司康誠くらいしか見当たらない。

 そもそも石井氏のGM就任後、ドラフト上位で指名した高校生は、黒川史陽(2019年2位、内野手)と、吉野創士(2021年1位、外野手)だけで、若手の有望株がそもそも少ない。そんな黒川さえも出場機会をなかなか掴むことができていないのだ。

 石井氏としては、実績のある選手を集めて、まず優勝を果たし、その後に世代交代を行うプランを描いていたかもしれないが、このままでは中途半端な成績が続いて、若手も伸びてこない“悪循環”に陥る可能性は捨てきれない。

 今シーズンも残り100試合を切り、夏場には来季以降の話も増えてくる。そんな中で石井氏、そして球団がどんな決断を下すのか。その結果次第で、再び楽天が暗黒期に突入することも十分に考えられそうだ。

西尾典文(にしお・のりふみ)
野球ライター。愛知県出身。1979年生まれ。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行う。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員。

デイリー新潮編集部

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