【米女子ゴルフ】デビュー戦で優勝の「ローズ・チャン」 ハプニングにも動じない大学中退20歳の新星

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米ゴルフ界全体が祝福

 米女子ゴルフ界の歴史を紐解いてみると、デビュー戦で初優勝を挙げたのは、1951年のイースタン・オープンを制したビバリー・ハンソン以来、実に72年ぶりの快挙だ。

 かつて「女王」あるいは「最強の女子選手」として名を馳せたアニカ・ソレンスタムや朴セリ、ロレーナ・オチョア、ミッシェル・ウィ、最近ならジェシカ&ネリーのコルダ姉妹も、みなデビュー戦で初優勝を挙げることはできなかった。

 それほどの歴史的快挙を達成したというのに、当のチャン本人は「信じられない!」と無邪気に喜んでおり、その様子が「とても新鮮で可愛らしい」「すごい選手になる」「超大型新人の出現だ」と米ゴルフファンは沸き返っている。

 やはりスタンフォード大学の大先輩に当たるウッズからは「NCAAタイトルに続いてプロデビュー戦で優勝は素晴らしい」と絶賛するメッセージがTwitterで発信された。

  PGAツアー選手のマックス・ホマやマスターズを主催するオーガスタ・ナショナルからも次々に祝福の言葉が寄せられ、まさに米ゴルフ界全体がチャンの優勝に歓喜している。

 ミズホ・アメリカズ・オープンにはスポンサー推薦で出場したチャンだが、同大会で勝利を挙げたことでLPGAの正式なメンバーシップと2年間のツアー出場資格を早々に手に入れた。そんなチャンの才能とこれからの可能性は「青天井だ」と米メディアも喜び勇んで書いている。

 デビュー戦の4日間を通じて驚きも不安も緊張もプレッシャーも「すべて経験させてもらいました」と笑顔で振り返ったチャンは、「それらを乗り越え、冷静沈着な状態を保ち、勝つことができた」と手応えも感じている。

 大半の選手がルーキーイヤーを通じて徐々に学ぶことをプロ初戦で全部学び、克服し、堂々の勝利。その勝ち方そのものが「ローズ・チャン、ここにあり!」と語りかけているようで、ウッズらが口にした「ハロー、ワールド!」のフレーズは「彼女には不要だ」と米スポーツイラストレイテッドは書いている。

 この勝利によって自身の存在を世界に知らしめたチャン。「ひょっとしたらウッズを上回る逸材ではないか?」とゴルフ界は期待を膨らませている。

 久しぶりの大型新人の登場だ。

舩越園子(ふなこし・そのこ)
ゴルフジャーナリスト/武蔵丘短期大学客員教授。東京都出身。早稲田大学政治経済学部経済学科卒。1993年に渡米し、在米ゴルフジャーナリストとして25年間、現地で取材を続けてきた。2019年から拠点を日本へ移し、執筆活動のほか、講演やTV・ラジオにも活躍の場を広げている。『王者たちの素顔』(実業之日本社)、『ゴルフの森』(楓書店)、『才能は有限努力は無限 松山英樹の朴訥力』(東邦出版)など著書訳書多数。1995年以来のタイガー・ウッズ取材の集大成となる最新刊『TIGER WORDS タイガー・ウッズ 復活の言霊』(徳間書店)が好評発売中。

デイリー新潮編集部

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