“五輪疑獄”もどこ吹く風…「遠藤利明」組織委副会長が、スポーツ界“総本山”のトップ就任への違和感

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「日本スポーツ協会新会長に自民・遠藤利明氏就任へ」というニュースの見出しを見たとき、思わず目を疑った。まさか……。ありえないことが平然と書かれている。しかも、これに反対する動きもなさそうなニュアンスにますます戸惑った。まずは毎日新聞(2023年5月25日)の記事を引用しよう。

なぜ防げなかったのか

〈6月に改選される日本スポーツ協会の新会長に自民党の遠藤利明総務会長(73)の就任が有力になっていることが判明した。遠藤氏は現在、協会の副会長を務めており、伊藤雅俊会長(75)=味の素特別顧問=は3期目の任期満了で退任する。政治家の会長は2005~11年に務めた森喜朗元首相以来となる。遠藤氏は副文部科学相、初代五輪担当相を歴任し、スポーツ基本法の策定に携わるなどスポーツ行政に明るい。21年夏に開催された東京オリンピック・パラリンピックでは大会組織委員会副会長を務めた〉

 改めて言うのも恥ずかしいが、スポーツ界はいま「救いようのない構造腐敗が露呈し、根本的な体質改善、組織改革、人事刷新が求められている」と、私は認識していた。おそらく、世間一般に多くの人がそう思っているのではないか。

 東京オリンピック・パラリンピックの支出が当初予算を遥かに上回る1兆4238億円にのぼっただけでなく、贈収賄事件に絡む捜査・報道の過程で、不正または異常に高額な報酬で業務発注が行われていた事実も明らかになった。なぜこのようなやりたい放題が許されたのか、防げなかったのか。原因の分析と本質的な体質改善が急務と、当事者たちは認識しているはずではなかったのか?

利権構造を……

 ところが、日本のスポーツ界の総本山とも言うべき「日本スポーツ協会」の会長に、東京五輪に深く関わっていた当事者のひとりである遠藤利明氏が選ばれる、という話である。初代の五輪担当大臣であり、組織委員会の副会長だった人物だ。だから遠藤氏も不正の一端を担っていたと決めつけるわけではない。不正に関わっていようがいまいが、その組織の中枢にいた人物は、この状況では身を退くのが賢明な選択ではないか。まして、周囲が一致して遠藤氏を祭り上げ、会長に推すということは、スポーツ界、そしてスポーツ界の周辺に蠢く政財界の「実力者」たちは現状の利権構造を何としても守る決意だ、という風に窺える。

 スポーツ庁でも東京都でも札幌市でも、再発防止を謳って「有識者会議」などが立ち上げられている。だが、経過を見る限り、巧妙なトカゲの尻尾切りで事態を収拾する思惑が透けて見える。たいていの会議は、弁護士や公認会計士、スポーツ団体の関係者で構成されている。法務・税務の専門家も一員としては必要だろうが、彼らが主体となってスポーツ界の未来を構築するおかしさを誰も指摘しない。

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