首位独走「岡田阪神」を支える“守護神潰し”の神髄は四球にあり

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8連勝で交流戦へ

 守護神・大勢(23)を叩くのは次回に持ち越しとなったが、宿敵・巨人に3タテを食わして、今季初の8連勝で、交流戦へ。

 岡田阪神が5月28日の巨人戦に勝利した。2位・DeNAとのゲーム差は「6」。貯金も今季最多の「16」まで広がり、30日から始まるセパ交流戦に弾みをつけた。岡田彰布監督(65)も饒舌になり、

「5番バッターだけ打たんかったけど、まあ一人ぐらいええかな」

 と、クリーンアップで唯一ヒットがなかった佐藤輝明(24)をいじり、記者団の笑いを誘った。一度は同点に追いつかれたが、7回裏の集中打で再び突き放した。巨人との直接対決の成績は、これで6勝2敗。差が広がりつつあるが、興味深いデータもある。

「原辰徳監督(64)は5月17日に歴代単独9位となる1238勝を挙げましたが13日、岡田監督も通算600勝に到達しています。原監督の半分とはいえ、学生時代からの知り合いで、共に認め合うライバル同士ですからね。」(スポーツ紙記者)

 岡田監督は「巨人戦は意識している!」と言い切り、伝統球団同士の対戦を特別なものと位置づけてきた。

「第一次政権期の岡田監督は、巨人戦にぶつける先発投手が誰なのかを隠すため、監督室のホワイトボードに別の投手名を書いたこともありました。『予告先発』が導入されていなかった時代ならではの陽動作戦です」(阪神OB)

 両球団はライバル同士だからか、「似ている部分」もあるが、対照なところもあり、それが今季の阪神の強さともなっているようだ。3連戦が始まる前までのデータを比べると、分かりやすい。チーム打率だが、巨人は2割5分3厘で、阪神は2割5分4厘(25日時点。以下、記録は同)。これはほぼ同じと言っていいだろう。

 巨人の総本塁打数「50」はリーグトップだが、阪神が他チームを圧倒しているのは、「四球」。「四球157」はダントツで、さらに「犠打33+犠飛19=52」もリーグトップだ。阪神の総得点「180」(1位)に対し、巨人は「173」(2位タイ)。つまり、ホームラン攻勢の巨人に対し、岡田監督は走者を出したら、打線のつながりで得点を積み上げていくのだ。

岡田阪神、強さの秘密

「走者を出したら、チャンスを広げ、次のバッターが返していくスタイルとも言えます。セ・リーグの打点ランキングを見ると、10傑のなかに阪神選手が3人もいます。佐藤輝明(24)が1位で30打点、大山悠輔(28)が3位タイで27打点、25打点の近本光司(28)が7位タイ。3番のノイジー(28)が20打点で12位、2番の中野拓夢(26)も19打点で13位。下位打線のバッターが『四球』で出塁したら、1番から5番までのバッターがそのチャンスを広げ、得点に結び付けています」(在阪メディア関係者)

 改めて言うが、岡田阪神の強さは、リーグトップの四球にある。打線において、岡田監督は四球は「出塁」「連続出塁」「塁を進める」の3つの要素に発展するとも考えており、選手たちは巨人のようなホームラン攻勢に頼らなくても得点を積み上げ、勝利する野球を教えられた。

「27日の巨人戦、7回1死一塁の場面で、8番木浪が送りバント、2死二塁として代打の渡邉が四球を選び、1番近本が中前適時打で先制。2番中野も2点適時打で続きました。大事な場面で四球を選ぶだけでなく、失策が大きく減ったことで相手チームに余計な点を与えなくなりましたね」(前出・同)

 昨季まで4年連続で失策数がリーグワーストだった。25日時点での失策数は「24」でリーグ5位。「エラーが減った」との評価はよく聞かれるが、数字上では昨季とあまり変わっていない。敗戦に直結するエラーや、大量失点につながるエラーがなくなったのだろう。また、今季、すでに延長戦を「4試合」も行っているが、3勝1分けで「負けナシ」。「延長戦=接戦」をモノにしている要因は“四球絡みの得点”だが、こんな見方もできる。今年の阪神は「守護神」に強いのだ。

「DeNA・山崎康晃、広島・栗林良吏、中日・マルティネス、ヤクルト・田口麗斗といったセ・リーグ対戦チームの守護神に『負け』をつけています。あと一人、巨人・大勢を打ち崩せば、セ全チームのクローザーに打ち勝ったことになります」(前出・阪神OB)

 特筆すべきは、昨季のセ・リーグ最優秀救援投手賞のマルティネスに打ち勝ったこと。マルティネスの今季の失点は「2」。その2点は5月3日の阪神戦に失ったものだ。

「他にも4月18日の広島戦、5月3日の中日戦、同24日のヤクルト戦は『1点ビハインド』の状況で、相手チームはクローザー投入でした。しかし、どの試合も逆転勝利を収めています」(前出・同)

 その“守護神つぶし”に絡んでいるのが「四球」だ。

 24日のヤクルト戦で田口が9回のマウンドに上がったときのスコアは「4対5」、1番・近本、2番・中野が三振し、敗戦濃厚となったが。3番・ノイジーの打球が照明に重なり、右翼手が後逸。一気に三塁まで到達した。続く4番・大山だが、自らのバットで決めたいところをガマンして四球を選んだ。

 この大山の四球が、岡田監督の考える「四球=連続出塁」となって、5番・佐藤のバットから2点二塁打は生まれた。

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