ハレンチ過ぎる北朝鮮外交官の行状 外交パウチを使いアフリカで売ろうとした日本製品とは【元公安警察官の証言】

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 日本の公安警察は、アメリカのCIA(中央情報局)やFBI(連邦捜査局)のようにドラマや映画に華々しく登場することもなく、その諜報活動は一般にはほとんど知られていない。警視庁に入庁以後、公安畑を十数年歩き、数年前に退職。一昨年『警視庁公安部外事課』(光文社)を出版した勝丸円覚氏に、北朝鮮外交官の悪業について聞いた。

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 各国の外交官は赴任先で副収入を得ることを禁じられている。ウィーン条約で「個人的な利益を目的とするいかなる職業活動又は商業活動も行ってはならない」と定められているためだ。

 勝丸氏はかつて警視庁から外務省へ出向し、アフリカの日本大使館に警備担当の外交官として赴任したことがある。

「彼らは外交特権によって犯罪を行なっても逮捕されませんし、税金も払っていません。そういう立場の人たちが商売をしたら、赴任先の国民はたまったものではありません」

密輸ビジネス

 ところが、貧しい国の外交官が自国よりはるかに豊かで物価の高い国に赴任した場合、給料だけでは暮らしていけないケースが多々あるという。

「たとえば、ハイパーインフレが起きたジンバブエ、財政破綻でデフォルト(債務不履行)になったギリシャ、アルゼンチンのような国では、過去に公務員への給与が一時的にストップしたことがありました。そういう国の外交官は、赴任先でサイドビジネスをやらないと生活できません」

 中でも貧しい国の外交官といえば、北朝鮮の名が挙がるという。

「私が赴任したアフリカの国には、北朝鮮大使館がありました。2010年頃の話です。私の携帯に現地の警察から連絡があり、相談したいことがあるというのです」

 勝丸氏はすぐに警察に出向いた。

「FBIから警察に北朝鮮が本国から外交パウチを使って、大使館に怪しげな荷物を送っているという情報が寄せられたそうです」

 外交パウチとは、一般にはあまり聞きなれない言葉である。

「正式には、外交行嚢(こうのう)と言います。各国の大使館や総領事館は本国との間で、外交行嚢に機密文書や外交活動に必要な物品を入れて航空便や船便で輸送しています。外交官の通信の自由を保護するために、外交行嚢に入れた荷物は所有国以外の人間は開けることはできないとウィーン条約で定められています」

 北朝鮮は、この外交パウチを利用して密輸ビジネスを展開しているという。

「外交パウチを使えば、空港の保安検査や税関検査で開けられる心配はありません。かつて北朝鮮には、麻薬や拳銃などの禁制品やワシントン条約で国際取引が禁じられているサイの角や象牙を密輸し、国外退去になった外交官もいました」

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