戦力外の茶谷を4番で起用、メジャー流投手継投術…首位ロッテを支える吉井采配の妙とは

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ピギーバック作戦

 千葉ロッテは40試合を消化した時点で、24勝14敗2分け。2位・福岡ソフトバンクに2ゲーム差をつけ、単独首位に立っている。そのリーグ最速での「貯金10」に到達した5月24日の埼玉西武戦にも“吉井エッセンス”が加えられていた。

「前日23日の同カードが雨天中止となった時点で、『おんぶ作戦』を予告していました。23日の先発予定が小島和哉(26)で、24日はC.C.メルセデス(29)だったんですが」(前出・記者)

 吉井監督は「小島が予定通りで、C.C.が小島の後ろでおんぶ」と語った。「おんぶ発言」が出たのは23日の試合中止が正式発表された直後。口調はいつも通りクールだったが、意味シンな笑みを浮かべていた。

 この時点で、試合展開だけは予想できた。小島が先発し、その後にメルセデスが救援登板する――。吉井監督は「あくまでも計画ですけど、2人で終われたらいいなあって思っています」と語っており、実際にその通りになった。メジャーリーグでは「Piggy-Back(ピギーバック)」と呼ばれる投手継投の作戦がある。先発投手が臨時で救援にまわるのだが、その目的は長いイニングを投げてもらうこと。

「21日の楽天戦で、予告先発された森遼大朗が背中の張りを訴え、急きょ6人の投手をつなぐスクランブル態勢になってしまいました。吉井監督は『無駄遣いしてしまった』と同日の試合を振り返っていましたが、リリーフ陣を休ませることがいちばんの目的でした」(球団関係者)

 連戦で先発投手が不足した際、リリーフ投手を総動員させる「ブルペンデー」が、近年のメジャーリーグの主流作戦となっている。主力選手である先発投手の主張が強くなった近年では、「ピギーバック」はほとんど見なくなった。直訳すれば、「おんぶする」「コンテナ車両をつないだ鉄道輸送」を指すそうだが、メジャーのスプリング・トレーニングを定期視察する吉井監督らしい作戦だった。

 しかも、この作戦は、チームにもファンにも嬉しい副産物をもたらした。佐々木朗希(21)の復帰登板日も変更せずに済んだのである。

 小島は雨天中止でスライド登板となったが、リリーフ登板したメルセデスは登板日を変更していない。

「5月5日にマメを潰した佐々木は当初、21日に復帰登板する予定でした。19日に雨天中止となった時点で、吉井監督は一週間遅らせて28日の先発を告げました。メルセデスまでスライドさせていたら、まだ経験の浅い佐々木は調整に苦しんだかもしれません」(前出・関係者)

「選手に無理をさせない」の所信表明が思い出される。優勝争いが激化する終盤戦を見据えてのことだが、山口、藤原、荻野らの主力が帰ってきたとき、チャンスをもらった茶谷も今以上の戦力となっているはずだ。吉井マジックが冴え渡る千葉ロッテが、パのペナントレースの主役となるかもしれない。

デイリー新潮編集部

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