日本の防空システムを毀損する上海電力の風力発電事業 見返り目当てで再エネ企業を応援する議員の名前は?

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 中国企業「上海電力」が北海道で取り組む風力発電事業が、自衛隊のレーダーシステムに深刻な影響をもたらすとの懸念が高まっている。外資の基幹インフラ事業はいかに日本の安全保障を脅かすのか。日本戦略研究フォーラム政策提言委員の平井宏治氏が解説する。

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 わが国では再生可能エネルギー(以下、再エネ)政策が推進されており、いまも全国で太陽光発電所や風力発電所の建設が進んでいる。それを後押しするのが電気の固定価格買い取り制度(FIT制度)で、これこそが世界中から一獲千金を狙う投資マネーの参入を招く要因になっている。

 言うまでもなく電力産業は日本の基幹インフラの柱だが、全国の風力発電所で使用される風車が日本の安全保障、とりわけ防空体制に重大な影響を及ぼすことはほとんど知られていない。

 現在、航空自衛隊は全国28カ所でレーダーサイトを運用している。固定式警戒管制レーダーで周辺空域を常時監視しており、領空侵犯機を発見した場合は空自基地から戦闘機を緊急発進(スクランブル)させて対応する。

 防衛省によると、昨年度上半期(4月から9月)の緊急発進は446回に達し、前年同期比で56回増加している。対象となった侵犯機の国籍は中国が最も多く340回で、ロシアが95回。安全保障に詳しい識者たちが、水面下でロシアとつながる中国による台湾有事が近づいていることを指摘する根拠の一つである。

レーダーの能力を脅かす巨大な風車

「台湾有事は日本有事」とは、昨夏に命を落とした安倍晋三元総理の言葉でもある。じわじわと台湾海峡や東シナ海における緊張が高まる中、自衛隊は駐留米軍とともに警戒監視やさまざまな訓練活動を展開中だ。

 自衛隊や在日米軍の活動において、電波の円滑な利用は極めて重要である。一般にレーダーは、照射した電波の反射波を受信することで物体の位置を特定する。中ロ機や国籍不明機、弾道ミサイル、高速化・長射程化が図られた巡航ミサイル、最近では小型の無人機(ドローン)など、いまや空からの脅威は複雑化・多様化している。レーダーの重要性は増すばかりだ。

 レーダーは文字通り“安全保障の目”だが、その能力を脅かしているのが風力発電所の巨大な風車である。陸上に設置されるものは1基当たり高さ百数十メートル、洋上では二百数十メートルに達する。これに自衛隊のレーダー波が当たると、風車は強く大きな反射波を生じさせる。半径数百キロの範囲をカバーするレーダーにとって、全長十数メートルの戦闘機やミサイルは小さく反射波も微弱で、風力発電用の巨大な風車からの反射波に埋もれてしまう。つまり、領空侵犯機やミサイルといった目標の探知や追尾に大きな支障を生じさせるのである。

 無論、レーダーには不要な反射波を取り除く機能が備わっている。それでも、風力発電用風車の羽根は風向きや風の強さに応じて方向や速度を変えながら回転する。そのため、風車が生じさせる反射波を完全に取り除くことは現在の技術では困難とされている。

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