「キレる老人」は他人事ではない…中高年が気を付けるべき「高次脳機能障害」、ヤバい4つの症状とは

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前頭葉の萎縮で起こる性格の「先鋭化」

 加えて、認知症の中でも「ピック病」と呼ばれるものに罹患すると怒りっぽくなるという。

「初老期に発症しやすいピック病は、前頭側頭型認知症の1つです。脳の前頭葉と側頭葉を中心とした萎縮によって発症し、やはり感情のコントロールができずに怒りっぽくなります。認知症は全般的に、露出などの性的逸脱や物忘れが起こりますよね。厄介なのは、怒りっぽくなることも含めてそれらは総じて本人の自覚がない、“隠された病気”ということです」

 若い頃は出来ていた感情のコントロールが、加齢やピック病などによる前頭葉の萎縮で出来なくなってしまう。老年精神医学では、前頭葉の萎縮で起こる性格の変化を「先鋭化」と呼ぶ。いったいどういう状態なのか。

 具体例として、家族間でよく起こる出来事をあげてみよう。たとえば突然、「私のお金がなくなった!」と、事実でないことを口走ること。家族や周囲の人たちが「どこかに置き忘れたのでは?」となだめると、「私の勘違いだった」と修正し、態度を改めることもある。

 ところが「先鋭化」が徐々に進行すると、「何か買ったのかもしれない」「保管場所を忘れたかもしれない」「そもそもなかったのかもしれない」など自分であれこれと想像して、事実を追究するようになる。「先鋭化」がさらに進行すると想像も出来なくなり、ついには「子どもが盗んだ!」「お前が盗った!」と、怒りまくる“感情の爆発”が生じるのだ。

 中高年は誰しも、高次脳機能障害および加齢による「先鋭化」について注意が必要だ。とはいえ、本人に自覚がないものをどのように注意すればよいのだろうか。

「家族や周囲の人たちから、『最近、怒りっぽくなったね』『感情が激しくなった』といった指摘を受けたら、何らかの病気を疑ってみることです」

 指摘された事実に怒ってしまうという悪循環もありえる。やはり重要なのは、信頼できる周囲との密なコミュニケーションだろう。

取材・文/段勲(ジャーナリスト)

デイリー新潮編集部

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