「藤浪晋太郎」の勝利を呼び込んだことも?グラウンドに乱入した“珍客騒動”

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野ウサギが逃げ回って試合が中断

 5月6日(日本時間5月7日)の米大リーグ、カージナルス対タイガースで、今春“侍ジャパン”の一員としてワールド・ベースボール・クラシック(WBC)優勝に貢献した、カージナルス・ヌートバーの打席のとき、グラウンドにリスが現れ、思わずタイムをかけるハプニングが起きた。自然環境に恵まれた米国らしい微笑ましい光景だったが、実はNPBの試合でも、グラウンドに乱入した“珍客”のエピソードには事欠かない。【久保田龍雄/ライター】

 都会では見ることができない野生のウサギが、白昼堂々野球場に姿を現す珍事が起きたのが、1975年4月18日に県営富山球場で行われた中日対大洋である。

 2対0とリードした大洋の3回の攻撃中、茶色い野ウサギが左翼の芝生席に現れ、フェンスを飛び越えてグラウンドへ。レフトを守っていたローンのすぐ隣にチョコンとお座りした。

 招かれざる珍客の乱入で試合は中断し、審判団、両軍ナイン、球場職員らが総出で大捕り物劇を演じたが、文字どおり脱兎のごとく、すばしっこく逃げ回るため、なかなか捕まらない。

 ついに捕獲をあきらめて、試合を再開することになったが、その後も野ウサギは内外野のグラウンドや時にはベンチ前まで自由気ままに走り回り、そのたびにタイムがかかって試合が中断する羽目に……。

 だが、3イニング前後にわたった騒動も、野ウサギが外野フェンスの下に潜り込んで“お休みモード”になったため、ようやく収まった。試合は騒動直後の7回に逆転した中日が、8回からエース・星野仙一を投入し、6対5で逃げ切った。

 試合時間が3時間19分と長引いたのは、両軍合わせて11人の投手が登板したことも影響しており、けっして野ウサギだけが原因ではない。

甲子園の“イタチ騒動”

 富山のウサギ騒動に対して、甲子園では2013年に“イタチ騒動”が勃発した。同年8月31日の阪神対広島、1対2とリードされた広島の5回の攻撃が始まろうとしたとき、アルプス席の辺りに1匹のイタチが顔を出し、左翼からグラウンドに乱入。芝の上を走り出すと、あっという間に三遊間を通過し、三塁側広島ベンチへ。広島ナインは、ベンチ手前の損保の広告の上に乗ったイタチをあっけに取られて見守るばかりだった。間もなくイタチは忽然と姿を消した。

 マウンドで一部始終を見ていたルーキー・藤浪晋太郎は驚きながらも、「ちょっと可愛かったので、思わず苦笑いしてしまいました。可愛かったので許してあげましょう」と心が和んで緊張がほぐれた様子。6回を1失点に抑える好投で、球団の高卒の新人投手では、1967年の江夏豊以来の二桁勝利(10勝目)を挙げた。

 また、2003年8月27日の巨人戦では、5回の阪神攻撃中に一塁側ベンチから突然、猫が飛び出し、星野仙一監督をビックリさせたばかりでなく、三塁側巨人ベンチの屋根の上に飛び乗るシーンも見られた。初回に逆転3ランを放った金本知憲がこの回にも5点目のタイムリーを放ち、スタンドの阪神ファンが気勢を上げている最中だったので、猫も驚いてグラウンドに迷い出てきたのかもしれない。

 8月17日以降、5連敗を含む1勝6敗と足踏みが続いていた阪神は、乱入猫のご利益か、この日の勝利から怒涛の7連勝と上昇気流に乗り、9月15日に18年ぶりのリーグ優勝を決めている。

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