「40機」「整備士」「不仲」…沖縄・陸自ヘリ「UH-60JA」墜落事故で浮かび上がった陸上自衛隊の問題点

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セクショナリズム

 民間の航空会社との人材獲得競争が激化しており、自衛隊は後手に回っているのだという。例えばJALやANAの場合、工学系の大学生や大学院生、高等専門学校生などが「整備をやりたいです」と入社試験を受ける。

「自衛隊の場合、採用した隊員の中から希望と適正を見て整備部門に回すと言う人事をとっていますが、中には整備など全く考えたこともなかった隊員もいます。航空会社の整備士と比べると、どうしても意欲や専門知識に差が出てしまうことがあるのです。もちろん頑張っている整備士もたくさんいますが、どこも人員不足で相当な負荷がかかり、雑用を押し付けられることも日常茶飯事です。整備士が草むしりをやらされている光景は、陸上自衛隊員ならお馴染みでしょう」(同・関係者)

 UH-60JAと同じように、整備士も酷使されている。さらに今回の事故に関しては、セクショナリズムの弊害も加わったようだ。

「陸上自衛隊の西部方面隊は、福岡県の第4師団、熊本県の第8師団、そして沖縄県の第15旅団で構成されています。本来、2師団1旅団の関係は“対等”です。ところが、伝統的に第8師団は第15旅団を下に見る傾向があるなど、水面下では相当な軋轢があるのです」(同・関係者)

第8師団vs.第15旅団

 第8師団のある熊本県は、昔から自衛隊に理解のある県民が多い。そんな第8師団が沖縄県で演習を行うと、どうしても地域住民への配慮に欠けることが多い。

「一方、第15旅団は、自衛隊に批判的な県民の声にも真摯に耳を傾けてきました。演習を行う際は、県民の批判を招かないよう、海岸に残る轍のあと一つを取っても細心の注意を払うのです。第8師団は第15旅団への配慮に欠けている、そう批判されても仕方ないと思います」(同・関係者)

 デイリー新潮は4月24日、「陸上自衛隊のヘリは海上を飛ばない…沖縄・ヘリ事故のパイロットはいつもの精神状態ではなかったのか」の記事を配信した。

 この記事で軍事ジャーナリストは「わざわざ第8師団のUH-60JAを宮古島まで飛行させた」ことと、「視察で第8師団の幹部が2機のUH-60JAに分乗しなかった」ことは、危機管理上、問題があると指摘した。

「確かに第15旅団のUH-60JAは、第8師団の機体より海上飛行に対応しています。何より旅団のパイロットは宮古島の空を知り尽くしています。しかし、師団と旅団の関係を考えると、第8師団の師団長が第15旅団のヘリに乗るというのは想像すらできません。おまけに、たった40機しかないUH-60JAの稼働状況を考えれば、いくら師団の幹部とはいえ2機に分乗する余裕はなかったでしょう。1機を宮古島に持って行くだけで手一杯だったはずです」(同・関係者)

デイリー新潮編集部

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