没交渉だった兄の死を知った妻は激しく動揺…更年期障害で苦しむアラフィフ夫が抱いた疑念に彼女が見せた反応は

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 人間、半世紀も生きていればいろいろなことがある。体も心も変わっていく。最近、少しずつ知られるようになってきたが、男性もホルモンバランスが崩れて“更年期障害”に陥る。症状には個人差があるものの、そういう年代になったと受け入れる必要もあるのかもしれない。

 作倉雅和さん(52歳・仮名=以下同)が、心身に違和感を覚えたのは48歳のころだ。いわゆる“寝起きの元気”がほとんどなくなった。ちょうどそのころ部長に昇進したばかりで仕事は多忙を極めていたから、そのせいだと自分に言い聞かせた。

「うちの会社は営業部が第一、第二と分かれていたんですが、それが統合されることになった。はっきり言えば会社の業績が上がっていなかったから。その前提で僕が第一営業部の部長に任命されたらしい。つまり第二営業部で前から部長をしていた先輩を、会社は降格させるつもりだった。もちろん僕はそんなことは知らなかった。だけど実際に統合されると、先輩は『おまえは体制側についたわけだ』と言った。誰かに怒りをぶつけなければやっていけない状態だったんだと思うけど、ちょっとショックでした。さらに営業部の3分の1の社員は他部署へ行かされたし、慣れない仕事に辞めていく人もいた。せつなかったし虚しかった。それでも会社を辞めるわけにはいかない。生活がありますから」

 アラフィフ世代は仕事や人生で転機が起こりやすい。そこへもってきて半世紀使った体もそろそろがたがくる。メンテが必要になる時期なのだろう。

ちょっと変わった雅和さん夫婦のなれそめ

 ちょうどそのころ結婚20周年を迎えた。彼の結婚のきっかけは少しだけ変わっている。

「僕個人は平穏無事が何よりという小心者なんです。だけどいろんなことに巻き込まれてしまう体質なんでしょうか。僕が結婚した相手は、兄の婚約者だったんです。奪ったわけではなく、兄が一方的に婚約破棄をしたので僕が彼女を慰めていたら子どもができてしまって。僕は彼女を好きになっていたので、そのまま結婚したわけです」

 婚約してから気持ちが変わることはあるだろう。だが、兄はある日突然、「結婚したくなくなった。もうきみのことをなんとも思っていない」とだけ告げて去ったのだという。あまりにひどいと、婚約者の珠希さんは、事情を聞こうとした雅和さんの前で泣いた。兄はその後すぐ家を出て行き、婚約破棄の理由はわからないままだった。

 半年後の雅和さんの結婚式に兄は来なかった。兄の友人を介して結婚することは伝えたが連絡はなかった。

「結婚して半年後に長女、2年後に長男が産まれました。兄との一件がトラウマになっているのではないかと実は僕、ずっと気にしていたんですが、長男が産まれたあと、妻は『私、あなたと結婚して本当によかった』と笑った。それで僕もホッとしました」

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