「中国では誰でも拘束される可能性が」「大使館も役に立たない」 身に覚えのない罪で6年間服役した男性が明かす凄絶な獄中生活

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父との5分間の会話

 令和2年11月に懲役6年の判決が確定。拘置所生活は3年9カ月に達していた。

「その後、刑務所に収監されると初めて家族への電話が許可されました。5分ほどでしたが4年ぶりに話した父には“頑張れ”と励まされて。涙が出ました」

 コロナ禍で面会が原則禁止だったことから、鈴木氏は一度も面会を求めなかったという。

「ひと月に150元(約2500円)まで買い物ができましたが、それより刑務所では医者の診察は望めないので、健康維持には気を配りました。結果的に96キロあった体重は30キロ減り、痛風は完治。糖尿病予備軍であることを示すさまざまな数値も改善されました」

 ここでの生活は1年11カ月。居住監視から6年3カ月が経過した昨年10月、鈴木氏は刑期を終えて出所した。

「中国では誰でも拘束される可能性が」

 一方で中国には、いまも5人の日本人が拘束されている。今年3月に捕まったアステラス製薬の50代男性幹部社員もその一人だ。

「中国では新型コロナウイルス関連の薬品を人民解放軍傘下の軍事科学院が扱っています。仮にそれに関する罪だとすれば、懲役10年以上の厳しい処罰が下される可能性があります」

 苛烈を極めた6年の月日。鈴木氏は、改めて中国の恐ろしさを実感したと語る。

「誰が国家安全局員か分からないうえ、彼らは平然とウソをつく。取り調べを受けるうち、僕は10年前から監視されていたことに気付かされた。いまの中国では誰でも拘束される可能性がある。友好だけでは日中関係が成立しないことを、我々は肝に銘じる必要があります」

 今後は同様の被害を防止するため、自身の体験を世に訴えていくそうだ。

週刊新潮 2023年5月4・11日号掲載

ワイド特集「スティ・ゴールド」より

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