「中国では誰でも拘束される可能性が」「大使館も役に立たない」 身に覚えのない罪で6年間服役した男性が明かす凄絶な獄中生活

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 中国に進出した海外企業が技術や情報を窃取されたり、恣意的な法改正で不利益を被るケースが増えている。平成28年から6年間、身に覚えのない罪で服役し、このほど『中国拘束2279日』を上梓した日中青年交流協会元理事長の鈴木英司(ひでじ)氏(65)が、獄中生活と「チャイナリスク」を語った。

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「平成28年7月15日のことでした。シンポジウムの下準備で北京を訪問した帰国の日に、タクシーで北京首都国際空港に到着した途端、いかつい男たちに囲まれて“ニーシーリンムーマ?”(お前は鈴木か?)と聞かれたんです。“そうだ”と答えた途端、ワンボックスカーに押し込まれました」

 鈴木氏の中国との交流は40年以上。訪中回数は200回を超え、胡錦濤前国家主席(80)や李克強前首相(67)とも面識があった。

「“お前らは誰だ?”と尋ねると“北京市国家安全局だ”と。ここに拘束されて無罪になった人はいません。頭が真っ白になりました」

24時間の監視と厳しい取り締まり

 国家安全局は中国の情報機関の下部組織。スパイ活動のほか、国内の防諜や監視活動を担うとされる。

「逮捕状には私をスパイ容疑で拘束するとありました。携帯電話と腕時計、ズボンのベルトを奪われ、黒いアイマスクで視界を遮られた時は恐怖を感じましたよ」

 およそ1時間後に着いたのは、古びた建物だった。

「アイマスクを外されて、20畳ほどの部屋に通されました。入って右には2人の監視人用のソファと机。反対側にはベッドとテーブルが一つずつ。バスルームには洗面台と洋式トイレ、シャワーがありましたが、ドアはない。天井の四隅では監視カメラが光っていましたね」

 この日から、24時間の監視と厳しい取り調べが続く「居住監視」と呼ばれる監禁生活が始まった。

「分厚いカーテンは開けられず照明はつけっ放し。テレビや新聞はなく読書も禁止。監視人は雑談にも応じない。徐々に曜日と時間の感覚が薄れていきました」

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