日本のエース「山本由伸」、元大リーガーが「メジャーで確実に成功する」と太鼓判を押す理由

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サイ・ヤング賞投手との比較

 では果たして、山本は海の向こうへ渡った後にどれくらい活躍できるだろうか。近い将来を占う意味で、メジャーリーグのスカウトが時折引き合いに出すのがロイヤルズのザック・グレインキーだ。

 この右腕投手は39歳になって全盛期をすぎたものの、多くの球種を制球よく織り交ぜて打ち取る投球術は健在だ。2009年にはサイ・ヤング賞投手に輝き、今季開幕前の時点で通算223勝を達成。山本同様、卓越したフィールディング能力も備える万能タイプである。

 山本をグレインキーとなぞらえるスカウトの評価について、マキノンは大きく頷いた。

「よくわかるね。10年ほど前、グレインキーは95マイル(152.9km/h)くらい投げていた。何種類もの変化球を持っていて、そのうち4~5種類を投げ分けて打ち取っていく。そうしたピッチングは山本と同じだ。とてもいい比較だと思う」

 一方、投手目線ではどう映るのか。レイズでリリーフとして活躍した後、西武に加入した昨季10勝を挙げたエンスに印象を尋ねると、「スーパーピッチャーだ」と第一声で返ってきた。

「本当にいい投手だ。いい球種を4つか5つ持っている。日本のベストピッチャーの一人だ。何らかの理由で、ベストピッチャーではなかったとしてもね。見ていて楽しいピッチャーで、感心させられる。本当にいいピッチングを続けているからね。メジャーでも活躍できると思う」

「チームに勝利するチャンスをもたらすことができる」

 同じくマキノンに、山本のメジャーでの可能性を聞いた。

「メジャーでも多くの勝ち星を挙げられると思う。もちろん、どこのチームに行くかにもよるけどね。勝ち星を手にするには打線の援護が必要になるけど、山本はいつも6、7イニングを投げるから、チームに勝利するチャンスをもたらすことができる。だから、メジャーに行って成功を収めるための材料と才能を持っていると思う」

 先発投手が6回以上を投げて自責点3以内に抑える「クオリティスタート」という指標は、日本でも一般的になった。メジャーでは移動や時差がある中で10を超える連戦も珍しくなく、中4日で登板する先発投手はいかに試合をつくれるかが求められる。その意味で、マキノンの「チームに勝利するチャンスをもたらすことができる」という指摘は山本の価値を表していると言えるだろう。

 さらに、“商品価値”を高めるのが若さだ。マキノンが続ける。

「山本はまだ24歳だろ? これから年齢を重ねるにつれ、どんどんよくなっていくと思う。彼との最初の対戦では本当にいいフォークで空振り三振に打ち取られた。どうやって打ち返そうか、勝負するのが楽しみなピッチャーだ。彼みたいなピッチャーとは、毎日は対戦したくないけど(笑)。日本にいても、アメリカに行っても、彼の将来は輝かしいものになるだろう」

 今春のワールド・ベースボール・クラシック(WBC)やNPBのペナトレースを視察したスカウトの高評価が報じられる一方、直接手合わせしたマキノン、同じ土俵で戦うエンスの印象を聞くと、また違った視点から山本の才能が浮かび上がる。2人の声を聞くと、近い将来、海の向こうで活躍する日が一層楽しみになってきた。

中島大輔
1979年埼玉県生まれ。上智大学在学中からスポーツライター、編集者として活動。05年からセルティックの中村俊輔を4年間密着取材。帰国後は主に野球を取材。新著に『プロ野球 FA宣言の闇』。2013年から中南米野球の取材を行い、2017年に上梓した『中南米野球はなぜ強いのか』(ともに亜紀書房)がミズノスポーツライター賞の優秀賞。その他の著書に『野球消滅』(新潮新書)と『人を育てる名監督の教え』(双葉社)がある。最新作に『山本由伸 常識を変える投球術』(新潮新書)。

デイリー新潮編集部

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