テレ東「ヤギと大悟」は話題先行…新バラエティ「4番組」はなぜ大苦戦しているのか

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 この春、放送枠を移動しただけのものを除くと、民放のプライム帯(午後7~同11時)には7本の新バラエティが生まれた。中には既に大苦戦している番組もある。そのうち個人視聴率が2週間にわたって3%(世帯5%)に到達していない4本を考察した。それによって、求められているバラエティの姿を浮かび上がらせたい(視聴率はビデオリサーチ調べ、関東地区)。

「ヤギと大悟」は話題先行

 4月第3週も第4週(同17~30日)も個人視聴率が3%(世帯5%)に届かなかった新バラエティを深掘りしたい。まずテレビ東京「ヤギと大悟」(2023年4月7日からレギュラー化、金曜午後7時25分)。同28日放送は個人1.0%(世帯1.6%)で、この日の同7時台の番組の中で最下位だった。

 千鳥・大悟(43)がヤギのタンポポ(通称・ポポ)に雑草を食べさせながら、緑豊かな地域を散歩する番組。独創的だが、残念ながら現段階では企画を生かし切れていないと見る。話題先行だ。

 5月5日放送の神奈川県愛川町編の場合、大悟のトークはいつもながら愉快だったものの、披露する場面が少なかった。大悟が地域の人と接し、雑草をポポに食べさせる許しを得るのが大きな見どころであるはずだが、これが短い。

 毎週ゲストがいる。この日は前半が福士蒼汰(29)、後半が飯豊まりえ(25)。大悟とゲストのトークは当然ある。ほかに大悟とスタッフのやり取りや昼食の場面などが映し出された。30分番組にもかかわらず、あれこれ詰め込まれているから、消化不良感が生じた。

 ポポが雑草を食べる場面は観ていてすぐに飽きる。同じ絵柄なので仕方がない。サルがバナナを食べる場面を長く観られないのと一緒だ。ポポをいかに短く効果的に使うかが人気浮上のポイントなのではないか。
 
 放送枠の問題もある。この番組の前に放送しているのはアニメ「ポケットモンスター」(金曜午後6時55分)。「ポケモン」を観ていた視聴者がそのままシブイ散歩番組である「ヤギと大悟」を観てくれるとは考えにくい。

 また、ほかの民放は同7時から1時間前後のバラエティを放送している。他局を観ていた視聴者が、同7時25分になったらチャンネルを変えて、「ヤギと大悟」を観るという例もそう多くないだろう。

視聴者がおいてきぼりの「推しといつまでも」

 TBS(制作・毎日放送)「推しといつまでも」(月曜午後10時)もかなり厳しい。4月24日放送は個人1.4%(世帯2.6%)。同じ時間帯でトップの日本テレビ「月曜から夜ふかし」は個人5.5%(世帯9.4%)だ。相当離されている。

「推しと――」は一般視聴者が熱く支持している著名人(推し)が、その一般視聴者の自宅に訪れ、もてなされる番組。MCを指原莉乃(30)、麒麟・川島明(44)が務めている。

 不振の理由はなんとなく分かる。5月1日放送にはNHK-Eテレの「おかあさんといっしょ」の11代目たいそうのおにいさん・小林よしひさ(41)を推す北海道の主婦(38)が登場した。息子(6)ともども小林の明るさに救われたそうだ。主婦は小林を「恩師」と表現した。

 主婦と息子らは自宅にやって来た小林を精一杯もてなした。家には「歓迎」の垂れ幕を貼り、息子は鉄火巻をつくって小林に食べさせた。

 主婦らは大喜びだった。小林も“たいそうのおにいさん冥利”に尽きただろう。めでたし、めでたし……なのだが、観ている側はおいてきぼりを食う。推しの人物と対面した感動や熱は他人と共有し難い。推しの人物は人によって違うからだ。

 推す側と推される側の対面というパーソナルな場面を、テレビというマス(大衆)メディアが伝える形になっている。パーソナルな場面をいかに一般化させて見せるかが今後のカギを握るのではないか。

 フジ(制作・関西テレビ)の「ひらけ! パンドラの箱 アンタッチャブるTV」(火曜午後9時)はフツウに面白いのだが、4月25日放送の視聴率は個人2.3%(世帯3.9%)と振るわない。

 同じ時間帯の対抗番組が強いことが大きい。同じ日の日本テレビ「ザ!世界仰天ニュース2時間スペシャル」は個人5.7%(世帯10.6%)、テレビ朝日「unknown」は3.4%(世帯6.1%)、TBS「マツコの知らない世界」は個人5.1%(世帯7.8%)、テレビ東京「開運!なんでも鑑定団」は個人4.1%(世帯7.3%)。この中に割って入るのは簡単ではない。

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