“濃い味付け”は子や孫にも悪影響、塩分の70%は「加工食品」から 今すぐ減塩すべき理由とは?

ドクター新潮 ライフ

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高血圧を招く「圧利尿」

 一方、塩分を過剰に摂取すると腎臓ではナトリウムの再吸収を抑制するホルモンが働き始めます。このホルモンの作用によって余分に摂取した水分とともにナトリウムの排出が促進されるのです。

 ところが、このホルモンの働きにも限界がある。ホルモンの働きだけではナトリウムの排出が追いつかなくなることがあるのです。そうなったときに登場する最終兵器、それこそが「血圧」そのものなのです。

 ホルモンの働きだけではナトリウムを排出できなくなった場合、私たちの心臓はポンプ機能をより強く発揮し、ポンプの力で多くの尿を出して余分なナトリウムを排出しようとします。この作用を「圧利尿」といい、過剰な塩分摂取が高血圧を招くのはまさにこの圧利尿が原因なのです。

 塩分を取っても血圧が上がりにくい人もいますが、それはナトリウムの再吸収を抑制するホルモンが敏感に働くから。ただ、日本人は欧米人に比べてホルモンの働きが弱く、血圧が上がりやすい。このように塩分によって血圧が上がりやすいタイプの人たちを「食塩感受性」と分類しますが、肥満やメタボリックシンドローム、糖尿病の人たちも食塩感受性であることが知られています。

 圧利尿はもともと、ケガなどで出血したときに体を低血圧から守るための作用でした。出血により血圧が下がりそうになった際に、われわれの体はナトリウムをため込み、圧利尿によって血圧を維持しようとしたのです。

「低血圧仕様」に進化

 低血圧から体を守る機能は他にもあります。心臓や脳、腎臓など主要な臓器にみられる、太い動脈から直接細血管が延びる「緊張血管(strain vessel)」もその一つ。血圧が低下した際、生命維持に重要な部位へ優先的に血液を運べるよう、他の部位のように徐々に細くなるのではなく太い動脈に直接細血管がつながっているのです。ところが、このような細血管は太い動脈からダイレクトに血液が流れ込むため、高血圧によるダメージを受けやすい。

 何が言いたいかというと、圧利尿にしても緊張血管にしても、われわれの体はとにかく「低血圧仕様」なのです。食塩摂取が困難だったことや、ケガをもたらす外敵の存在から、飢餓や低血圧に対応できるような進化を遂げてきた。まさか高血圧が生命の脅威になる時代が来るとは想像もしていなかったのです。

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