茨城県が中国ではなく「台湾人旅行者」に力を入れるワケ “観光後発県”が投じるあの手この手

国内 社会

  • ブックマーク

ホテル関係者も手ごたえ

 土浦市に160室をもつ観光ホテルの担当者はこういう。

「茨城空港に台湾便が復活して以来、2日に1度のペースで30人規模の台湾人グループの方に利用していただいています。今日も午後の台北便で戻る台湾人グループの方が泊まっていただきました。昼までゆっくり近くの電気店やドラックストアで買物を楽しまれていたようです。コロナ禍前は、中国の春秋航空などにもっと多くの国際線が就航していたんですが、茨城県内に宿泊する様子はなく、茨城県はスルー状態でした」

 このホテルは台北で開かれた商談会に参加した。予想以上の台湾の旅行業者が集まり、その場で宿泊契約をもらったという。台湾から確かな感触が伝わってきたという。

 台湾に舵を切ったかに見える茨城空港。報道される台湾と中国の政治的緊張が気になるところだ。茨城空港対策課によれば、中国便の中核になりそうな春秋航空とは意見交換を行っているが、一向に定期便就航のめどが立たないという。

 その一方で台湾路線では、週3便で、高雄-茨城路線の運航もはじまった。茨城県は、2023年度も「開運茨城」をキーワードに、渡辺直美を続投させたい構えだ。茨城県内の旅行会社の社長はこういう。

「日本の地方空港は中国とつきあってもうまくいかないってことだね。中国人は日本がはじめてという観光客が多いから、どうしても東京や京都といった有名観光地になびいてしまう。地方空港の地元にはお金を落としてくれないです。そこへいくと台湾や韓国からの観光客は来日回数が多い。地元の観光地に興味をもってくれるんです」

 コロナ禍がすぎ、地方の空港では中国離れが進む流れが生まれつつあるようだ。

広橋賢蔵(ひろはし・けんぞう)
台湾在住ライター。1965年生、1988年北京留学後、1989年に台湾に渡り「なーるほどザ台湾」「台北ナビ」編集担当を経て、現在は台湾観光案内ブログ『歩く台北』主宰。近著に『台湾の秘湯迷走旅』(双葉文庫)などがある。

デイリー新潮編集部

前へ 1 2 3 次へ

[3/3ページ]

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。