40年前の開業当日、「東京ディズニーランド」へ行った記者の証言 週刊誌の予想はことごとく外れた

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「ディズニーランドではガムは売っておりません」

 あるアトラクションの行列で、ガムをかんでいる客に、スタッフが「ガムをかんで中へは入れません。ここで捨てていただけますか」と声をかけた。

《「何だい、ガムくらい、いいじゃないか」「食べ物の持込みは、お断りしていますので」「このガムが持込みだって、どうしてわかる」「ディズニーランドでは、ガムは売っておりません」》

「このガムをかんでいた客というのは、実は私なんです」

 森重さんが、当時を回想する。

「ガムをかんでいたらどうなるか、試してみたのです。注意した若者は、私とほぼ同年の男性でした。あのときの『ディズニーランドでは、ガムは売っておりません』の“名セリフ”を、私はいまでも忘れることができません。そして、私の口元を見てガムを見逃さなかった注意力にも驚きました。TDLはすごい教育をしている、ここはいままでの遊園地とはちがう。このとき、はっきり感じました」

 しかし「週刊新潮」は、この程度のことでひるんだりはしない。入場ゲート外のベンチで弁当を広げている家族連れを発見する。なにしろ飲食物の持込みは禁止なのだ。記事には、その写真も載っている。

「この写真を撮ったのも、私です。たしかに、ゲート外で食事をしている家族連れがたくさんいたんです。さっそく話を聞きました」

《「せっかく家族で遊園地に来たのだから、芝生の上で一緒に弁当を食べたいと思いますよね。でも、中では誰も食べていないし、それで結局、食べるのを我慢して、とりあえず中を見て回ってから、ここへ出てきたんですよ」とオニギリをほおばりながらグチるのは六十五歳の老人。》

 さらにいくつかある食堂で、和食をさんざん探し回り、2000円の幕の内弁当を発見。これまたデカデカと写真を載せている。

「この写真も私が撮りました。幕の内弁当を発見したときは感動しました。写真のキャプションに“あった、日本料理も!”と付けたのは、あのときの正直な思いです。ほかに、ちらし寿司とカレーライスも目立たない感じでありました。しかし、ソバ、ラーメン、焼きそばはどこにもありませんでした。もちろん、生ビールも。そのうち、何の取材をやっているのか、妙な気分になったものですが」

 これに対し、当時のTDL側の広報課長は、こんなコメントを寄せている。

《「ソバやラーメンを売ってないのは、ここに来る人に、一種の疑似外国旅行を楽しんでもらいたいからなんです。われわれは、日本にディズニーランドらしきものを作ろうとしたのではなく、あくまで、ディズニーランドそのものを持って来ようとしたのです」》

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