瀕死の重傷の後に覚醒 ベン・ホーガンはなぜ史上最高のゴルファーになれた?(小林信也)

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 史上最高のゴルファーは誰か? その種の議論で真っ先に名前の挙がる「天才」がベン・ホーガンだ。

 1912年生まれ。11歳の時に地元テキサスでキャディーを始め、19歳でプロとなった。まだ黎明期にあって、PGAツアーで64勝(歴代4位)。メジャーも通算9勝。40年を皮切りに、PGA賞金王にも5度輝いている。

 ところが、ホーガンには意外なほど低評価がつきまとい、劣等感の中でゴルフ人生を生きていた。

 48年には年間10勝。文字通り「最強」の名をほしいままにする状況だったが、ホーガンはあまり人気も人望もないゴルファーだったと、いくつもの歴史書に記されている。

 最強であるがゆえに冷徹で、鋭い眼光から「鷹」と呼ばれるなど、ホーガンは近づきにくい印象ばかりを身にまとっていたようだ。

 それが一変するのは、49年2月。36歳で迎えるシーズンがまさに開幕した時期に、ホーガンは大事故に遭う。運転中、バスと正面衝突し、生死の境をさまよった。医師は当初、競技への復帰どころか、歩くことさえ難しいだろうと診断した。翌朝の新聞は次のように伝えた。

「グレーハウンド・バス、米国で最もすぐれたプロ・ゴルファーの選手生命を断つ――ベン・ホーガン瀕死の重傷」

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