今の坂本勇人は負担軽減のためにコンバートしても復活しない…打撃の天才であるが故にハマった“落とし穴”とは

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問題はフォーム

 ちなみに広澤氏が「自分も現役の時には、あんなフォームを目指していた」と振り返るのは、レッドソックスの吉田正尚(29)、ソフトバンクの近藤健介(29)、エンゼルスの大谷翔平(28)の3人だという。いずれもWBCで大活躍したというのが興味深い。

「体重移動、下半身の使い方、上体の姿勢など、全てが理にかなっています。3人とも左打ちですから最初は右足に体重を乗せ、それから左足に戻し、最後は再び右足に戻します。ちなみに日本のアマチュア野球では、3人のフォームをマネすると監督に叱られるかもしれません。アマでは推奨されないフォームだとはいえ、これこそが最も合理的な体重移動なのです」

 吉田、近藤、大谷が理詰めのバッティングだとすると、坂本は自由奔放でオリジナリティが極めて高い。だが、天才・坂本といえども、加齢と共に肉体は衰えてくる。それが打率や長打率に悪影響を与えているようなのだ。

「動体視力や反射神経、身体の微妙な動きなどが次第に衰えていくわけですが、あまりにも僅かな衰えで、自覚できないことも珍しくありません。しかし、時速150キロや160キロといったプロの球に対応できなくなるには充分な衰えなのです。これを克服するにはバッティングフォームを見直すしかありません。今のフォームのままならサードだろうとファーストだろうと、それこそセ・リーグにはありませんが守備負担がゼロのDHにコンバートしても、坂本くんの打撃は復活しないでしょう」(同・広澤氏)

待ち構える落とし穴

 天才の証明たる自己流のバッティングが難しい年齢になったのなら、やはり理詰めでいくしかない。

 もちろん吉田、近藤、大谷のフォームをマネするという意味ではない。基本に立ち返り、“34歳の坂本勇人”にフィットした合理的なフォームを見つけ出す必要があるという。

「今、坂本くんは、最も『聞く耳を持っている』状態だと思います。コーチとのコミュニケーションは必要ですが、そこには大きな落とし穴があります。ベテランが不振に陥ると、コーチも選手本人も一生懸命に“全盛期のフォーム”へ戻ろうとするのです。しかし、このアプローチだとスランプを悪化させる危険性があります」(同・広澤氏)

 今は動画の撮影が非常に簡単で、過去のバッティングフォームを収めた動画資料も豊富に揃っている。全盛期のフォームと不調に悩む今のフォームを映像で比較することも容易だ。

「しかし、動画を活用した練習が逆に徒になる可能性もあります。坂本くんに求められているのは過去のフォームに戻るのではなく、新しいフォームの開発なのです。肉体が衰えている以上、全盛期のスタイルを再現することは不可能です。未来につながるフォームを作り上げるという基本戦略を誤り、過去の栄光へ戻ろうとしてしまえば、どんな天才バッターでも復活は難しいでしょう」(同・広澤氏)

註:YAHOO!ニュースのトピックスに転載された記事タイトルは以下の通り。

◆巨人・坂本 遠い初安打…開幕4試合16打席連続無安打 9回には鋭い打球も好守に阻まれ(スポニチアネックス・4月4日)

◆【巨人】坂本勇人が今季初スタメン落ち…開幕4戦16打席連続無安打 代役の門脇誠「8番・遊撃」プロ初スタメン(報知新聞電子版・4月5日)

◆巨人坂本のスタメン落ちに原辰徳監督「いろんなことをトータル的に考えて」6日はスタメン復帰予定(中日スポーツ電子版・4月5日)

◆【巨人】坂本勇人開幕19打席無安打&ワースト5戦連続出塁なし「自分でなんとかしないといけない。それに尽きる」(スポーツ報知電子版・4月7日)

註1:坂本勇人が決意の激白「ショートをずっと守れるようにやっている」来季も遊撃一本で「戦っていく」(スポーツ報知・電子版:2022年11月5日)

註2:【巨人】坂本勇人、全試合出場へ変化追求「コンバート言われるのはすごく嫌」遊撃に強い誇り(日刊スポーツ・電子版:2023年1月17日)

デイリー新潮編集部

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