600万円で背を10センチ高くすることが可能…骨延長手術を600例行った整形外科医の告白

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運動能力が劣化

 2020年10月、「Forbes JAPAN」がラスベガスのクリニックが800万円で身長を15センチ伸ばす手術を行い、予約が殺到していると報じた。

「15センチも骨を伸ばすのは無茶です。1本の骨は5センチが限界です。骨が5センチ伸びると、神経や筋肉も伸びることになります。するとどうなるか。ゴムを伸ばした時のように、筋肉は硬くなってしまいます。骨延長手術をすると、明らかに運動能力が劣ってくるのです。膝が曲がりにくくなって、和式トイレでは座れなくなります」

 15センチも伸ばすと、歩けなくなったり、骨が曲がったりしてしまうケースがあるという。

「以前、ヨルダンで骨延長手術を受けて足が変形してしまった日本人男性が私の所へ来たことがありました。海外で手術をして失敗して私の病院に来るケースは、これまで10例ほどありました」

 男性だけでなく、女性が来院したこともあった。

「モデルのようにきれいな女性で、身長が180センチ近くありました。背が高いことにコンプレックスを抱いていたのでしょうか。足を短くして欲しいと言うので、さすがにお断りしました」

 骨延長手術は、足の骨だけに行うものではないという。

「足の指が人より短い方がいて、指の骨を伸ばしたことがあります。腕が短い方の上腕骨や前腕骨を伸ばしたこともありました」

 実は、吉野氏は17年間で骨延長手術を600例ほど行った後、昨年、クリニックを親族に任せて退職した。現在、クリニックでは骨延長手術は行っていないという。

「新型コロナがあって、人生を色々考え直してみたのです。正直申し上げると、医師として五体満足の体に身長を伸ばす手術を行うことに抵抗がありました。また、身長コンプレックスで来院する患者は、引きこもりの人が多かったのです。自分の身長にコンプレックスで精神的に病んでしまい、学校や会社に行かなくなったのです。そういう人たちに手術を行うことで本当に問題が解決するのか、うしろめたさを感じていました」

 加えて、手術をした患者の親戚などからクレームが来ることもあった。

「患者さん本人は、背が伸びて喜んでいます。しかし、運動能力が劣ってしまうので、なぜ手術をしたんだと、怒鳴られたことが何度もありました。それがストレスになってしまって……。僕は寒いところが苦手なので、今は鹿児島県の人口7000人の離島で診療所を開いています。のんびり暮らそうと思っています」

デイリー新潮編集部

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