「推し活」「沼落ち」に「デジタルドラッグ」… 脳内麻薬依存症からの脱出法とは? 世界的権威二人が警告

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 人は快楽を感じると脳内で化学物質・ドーパミンを出し、ドーパミンを得たいがために行動する。そこから容易に抜け出せないのは、「脳に仕掛けられたわな」にハマっているからだ。ベストセラーの著作を持つ精神医学の世界的権威二人が依存の仕組みを解き明かす。

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 人はなぜ、何かに「ハマって」しまうとそこから抜け出せなくなるのか。それは「脳内麻薬」ドーパミンのせいだ、と結論する一冊がある。

『ドーパミン中毒』(新潮新書)である。

 全米でベストセラーとなった同書の著者はスタンフォード大学医学部教授のアンナ・レンブケ博士。精神科医であり、依存症医学の世界的第一人者だ。仰ぎ見るような経歴の持ち主で4児の母でもあるが、恋愛小説中毒から抜け出せなくなった経験がおありだという。

 恋愛小説に限らず、現代社会はわれわれをとりこにする多様な誘惑に満ちている。

 恋愛・結婚そっちのけで「推し活」にプライベートを捧げ、「沼」に陥り大金を投じてしまう。課金もいとわずゲームに興じ、SNSに一日の大半を費やす――そんな若者が増加しているという報道を目にするが、いい大人だって大差ない。

 男性ならば酒に女にギャンブルに、女性ならばアイドル、韓流、宝塚等々に入れ揚げ、お金と時間に羽が生えて「こんなはずでは」という経験をした人も少なくないだろう。仕事や恋愛、筋トレですら「依存症」になりうると同書は警告する。

「ドーパミン経済」

 人が快楽を感じると、もしくは快楽を“期待する”と放出される脳内化学物質ドーパミン。われわれの行動は理性によらず、脳がより多くのドーパミンを得たいがためになされることがある。これが依存症を引き起こす原因ともなるし、企業もまたこうした脳の反応を利用し客を引き留めているとレンブケ氏は指摘する。わたしたちは「ドーパミン経済」のまっただ中で生きているのだ、と。

 こうした現代社会でいかにして生き延びるか、同様の指摘を行ったのが『スマホ脳』(新潮新書)をはじめとする世界的ベストセラーの著者、スウェーデンの精神科医アンデシュ・ハンセン氏だ。

 一連の著書は日本でも累計100万部を突破、「世界一受けたい授業」(日テレ系)などのテレビ番組でもおなじみかもしれない。

 デジタル機器に適応するようには人間の脳は進化していない、とハンセン氏は「スマホ依存」へ警鐘を鳴らす。レンブケ氏とはハンセン氏がホストを務めるスウェーデンのテレビ番組にゲストとして招いたこともある旧知の仲だ。

 二人が「コロナ明け」の今だからこそ、改めて警告する「現代社会のわな」とは。

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