結局「バフムト攻略戦」はロシア・ワグネルの敗色濃厚 軍事ジャーナリストが指摘する“勝敗の分れ目”

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教育レベル

 その後もウクライナ軍は善戦を続け、ロシア軍に多大な損害を与えてきた。「ロシア軍はバフムトでワグネルをわざと支援しなかった」という見方もあるが、そもそもロシアの正規軍に充分な戦力があれば、バフムト攻略戦にワグネルは不必要だったはずだ。

「欧米のメディアを中心として、ワグネルと囚人兵が脅威として認識されたのは、『彼らなら人を殺すことに躊躇がない』という考えがあったからでしょう。それは事実かもしれませんが、結局のところPMCは正規軍の敵ではないという事実が証明されただけでした」(同・軍事ジャーナリスト)

 特に現代の戦争では、タブレットなどIT機器の活用が当たり前となり、兵士の一人一人に“高い教育”が求められている。

「アメリカの南北戦争(1861~65年)で、『教育レベルの高い兵士は強い』という事実が証明されました。その後、富国強兵を目指す近代国家は、公教育の拡充が重要政策と考えてきました。率直に言って、囚人兵は教育レベルの低い者も少なくないでしょう。彼らが衛星回線や無線を使い、自分たちの位置を報告しながら砲兵隊と連携して攻撃を仕掛けることなど無理です」(同・軍事ジャーナリスト)

 しっかりとした教育を受け、自分の国を守るという気概に溢れたウクライナ兵に勝てるはずもなかったのだ。

砲撃戦の勝者

 もちろん、兵士がいくら優秀でも武器がなければ戦えない。NATO諸国の武器供与もウクライナ軍を強くしたことは言うまでもない。

「ゼレンスキー大統領は、自爆ドローンの『スイッチブレード』や歩兵携行式多目的ミサイルの『ジャベリン』などの供与を強く求めていました。ところが最近は、こうしたハイテク兵器に言及することが少なくなっています。実は、イギリスの国防省などがまとめたレポートによると、今回の戦争で最も威力を発揮しているのは榴弾砲なのです」(同・軍事ジャーナリスト)

 榴弾砲とは、要するに大砲のことだ。開けた平地の多いヨーロッパでは第一次大戦でも第二次大戦でも大砲が威力を発揮した。

「バフムトではウクライナ軍もロシア軍も大量の砲撃で相手を屈服させようとしました。しかし、ロシア軍やワグネルは砲弾の確保に苦しみ、北朝鮮から調達していたほどです。そのため不良品や不発弾が相当な割合に達したとも指摘されています。一方のウクライナ軍はNATO諸国から多数の榴弾砲と砲弾を供与されています。火力に勝るウクライナ軍がロシア軍とワグネルを退けたのは必然だったと言っていいでしょう」(同・軍事ジャーナリスト)

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