センバツでスカウト陣が驚いた“ノーマーク右腕”も…ドラフト戦線に浮上した逸材

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身長190cm、体重105kgの大型右腕

 一方、スケールの大きさでスカウト陣の目を引いたのは、東海大菅生の日当直喜(新3年)だ。身長190cm、体重105kgという高校生離れした大型右腕は、2点をリードした8回から4番手でマウンドに上がると、2回を無失点に抑え、城東の反撃を許さなかった。球場表示で最速148キロをマーク。ソフトバンクのスカウトのスピードガンでは150キロも計測したという。昨秋に右肩を痛めたが、オフに完治した。初戦は「試運転」という意味があったせいか、投じた27球全てがストレートだった。

 これだけ体格に恵まれれば、素質だけで野球をやっていると思われがちだ。しかし、日当は、大型投手らしからぬ“繊細な一面”を持つ。

 試合後のインタビューでは、セットポジションの時に、左足を少しクロスしている理由を報道陣に問われると、「少しモーションが早くなって、体は前に突っ込むのに、腕が後ろに残ってボールが抜けることがよりありました。それを防ぐために意図的にそうしています」と語り、フォームの研究に余念がない。

 また、大会にもなるべく普段通りの環境で臨めるように、チームで1人だけ寮からホテルにいつも使っている布団を送り、それで寝ているという。こうした細かい心掛けも、日当の成長に寄与しているようだ。

ドラフト戦線に急浮上の“無印右腕”

 最後に、ネット裏のスカウト陣が、予想外の活躍に驚いていた投手を紹介したい。光の升田早人(新3年)は、彦根総合(滋賀)を相手に、11個の三振を奪い、完封勝利を飾った。その球数は99球。奪三振数から考えると、かなり少ない、まさに“圧巻のピッチング”だった

 ストレートは自己最速を更新する143キロを記録。指のかかりの良さは抜群で、数字以上に打者の手元でホップするような勢いがある。奪った11個の三振のうち7個の決め球がストレートで、この点もボールの質の良さがよく表れている。カーブやスライダー、チェンジアップを一通り操り、どのボールも低めにしっかりと集める制球力を持っている。

「いかにも回転がよさそうなストレートを投げていました。彦根総合の打者が、ボールの下を振ってしまうことが、本当に多かったですね。体(現在は身長181cm、体重74kg)が出来てくれば、球速が上がってくるでしょう。学校関係者に聞くと、今大会前までは、大学や社会人からの(勧誘の)話はなかったようですが、(甲子園で)これだけの投げられたことで、獲得に動き出す(大学や社会人の)チームは多いと思います。3~4年後にドラフトの上位候補になるかもしれないので、今年のドラフトで、下位で獲得を狙っても面白いと考える球団は当然、出てくるでしょうね」(セ・リーグ球団スカウト)

 光は今大会が選抜初出場(※夏の甲子園は2度出場)で、過去にプロ野球でプレーしたせOBもいない。これまで、升田に対して、大学と社会人から具体的な勧誘がなかったのも、こうした事情が影響している可能性があるだろう。ドラフト戦線に急浮上した“無印右腕”。今後の成長が楽しみな素材である。

西尾典文(にしお・のりふみ)
野球ライター。愛知県出身。1979年生まれ。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行う。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員。

デイリー新潮編集部

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