犬にかこつけてご近所不倫…それでも「妻子を裏切っているつもりはない」と44歳夫に言わせる幼少時の記憶

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「噛んで」

 数日後、裕之助さんは犬を連れて未明に家を出て、芽依子さんの家に向かった。すでに連絡はしてある。芽依子さんは笑顔で迎えてくれた。そしてふたりはほとんど言葉を交わさないままに抱き合った。

「そのとき芽依子が、『噛んで』と。彼女を喜ばせたかったけど、僕にはできなかった。ごめん、無理だと言ったら、じゃあ、私がと彼女があられもない行為をしてきて……。僕はものすごく感じてしまったんです。『男性にも特別な性感帯があるのよ』と彼女は笑っていました。それ以来、彼女に責められるのがうれしくてたまらなくなった。妻や娘を裏切っている感覚なんてありませんでした。僕に新しい世界を見せてくれた芽依子さんに夢中になっていった」

 とはいえ仕事も家庭も疎かにしたつもりはない。眠る時間を削り、犬にかこつけて、彼は芽依子さんに会いに行った。

「忙しいときに限って、さらに別の出会いがあるものなんですよね。仕事の交流会で知り合った独身の文佳さんともときどき会うようになって関係を持ってしまいました」

 文佳さんもまた、性に積極的な女性だった。「一緒に行こう」とハプニングバーなどに誘われて行った。自らを解放して奔放な行為を楽しむ女性たちを見て、彼はようやく自分を縛っていた「何か」が溶けていくような気がしたという。

「それから常に、2人の女性が身近にいるようになりました。文佳さんはつきあって1年ほどたったころ留学すると去っていきましたが、『代わりに後腐れなくつきあえる子を紹介する』と言って。その代わりの子ともたまに会っています。いっさいお金は介在していません。彼女は20代前半と若く、性への興味は強いものの経験が足りないから、とにかく気持ちよくなりたいとよくせがまれるんです。ただ、最近は僕のほうが体力がなくなってきて。芽依子にいたぶられているほうが楽しくなってきました」

「ご近所不倫」は今もつづく

 芽依子さんとの「プレイ」はますますエスカレートしている。そしてそのたびに彼は精神的に解放されていくのだという。徒歩で行ける距離のいわゆる「ご近所不倫」でもある芽依子さんとの関係は、非常に危うい。誰かに見られたら、あるいは互いの配偶者に気づかれたら、とほうもない代償を支払うことになるだろう。

「うちの娘ももう16歳、高校生です。僕にとっては天使のような存在なので、彼女にだけは何があっても嫌われたくない。僕は“愛される”ことは今もよくわからないけど、彼女のおかげで愛することは体験できた。娘は僕が愛する唯一の存在かもしれない。でも一方で、外での“活動”は自分の存在を自分で認めるためには必要なことなのかなと思っています」

 浮気でも不倫でもない。女性との間に「恋心」は存在しないのだから。互いを認め合う行為であって、恋愛ではないというのが裕之助さんの言い分だ。もしバレたとき、妻が納得するかどうか。

「妻とはおそらく夫婦愛みたいなものはあると思うんです。僕は妻の意志を最大限尊重してきたし、これからもそうしていくつもり。今は親から受けたさまざまな呪縛が、すっかりほどけていると自分でも感じています」

 つまり、他の女性たちとの関係は、自分自身を保つために必要不可欠であり、家庭はまた別の意味で大事な存在だと彼は言いたいようだ。このまま誰にもバレずにうまくソフトランディングしていければいいが、この危ない橋を渡っている感じもまた、彼にとってはスリリングな快感に転換されているかもしれない。

亀山早苗(かめやま・さなえ)
フリーライター。男女関係、特に不倫について20年以上取材を続け、『不倫の恋で苦しむ男たち』『夫の不倫で苦しむ妻たち』『人はなぜ不倫をするのか』『復讐手帖─愛が狂気に変わるとき─』など著書多数。

デイリー新潮編集部

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