プーチンはほくそ笑んでいる…欧米の金融不安が続けば、ウクライナ問題にも大きな影響が

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 欧米の金融市場は3月に入り、大きく動揺している。

 米国で3月10日、米西海岸が地盤のシリコンバレーバンク(SVB)が破綻して以降、銀行への不安が急速に広まっている。12日に米東部ニューヨーク州のシグネチャー・バンクが破綻し、16日には米カリフォルニア州のファースト・リパブリック・バンクに対して米大手銀行が救済策(約4兆円規模の預金を拠出)を発表する事態となっている。

 震源地となったSVBの2022年末時点の総資産は約28兆円。リーマンショック時に破綻したワシントン・ミューチュアルに次ぐ、米銀では過去2番目の規模だった。

 規模以上に驚かされたのはSVB破綻の原因だった。「1日に1兆円以上の預金が流出する」という前代未聞の事態が起きたことに関係者はショックを受けている。

 イエレン米財務長官は16日、米連邦議会上院の財政委員会でSVBの破綻について「しっかり管理していてもソーシャルメディアなどをきっかけに預金が一気に流出すれば銀行は破綻の危機にさらされる可能性がある」と発言したように、ネット上の「取り付け騒ぎ」は新しい現象であり、従来の規制で危機を回避するのは難しい。

 イエレン氏はさらに「SVBは特に預金保険の対象外となる大口顧客が多かったために、対応が難しかった」と述べている。

欧州にも飛び火

 3月18日付ウォール・ストリート・ジャーナルは「SVBと同様のリスクにさらされる可能性がある銀行は186も存在する」と報じている。

 そのせいだろうか、米国の金融市場で資金繰りを「最後の貸し手」である中央銀行に頼っている構図が鮮明になっている。米連邦準備理事会(FRB)は16日「銀行による借り入れは15日時点で約20兆円に急増した」と発表した。この数字はリーマンショック時を抜いて過去最高となっている。

 米金融当局はさらに米銀全体が保有する預金(約18兆ドル)を保護するための特例措置を検討し始めている(3月21日付ブルームバーグ)。

 米銀の破綻劇は欧州にも飛び火している。

 スイスの金融大手UBSは19日、経営不安が強まっていたクレディ・スイスを約4200億円で買収すると発表した。

 大手金融2社の統合を後押ししたスイス国立銀行(中央銀行)は両行に14兆円超の規模の流動性支援を行うことを明らかにしている。スイス政府もUBSに対し、買収に伴い今後発生しうる損失に関して1兆2000億円規模の保証を与えている。

 UBSによるクレディ・スイスの救済は、リーマンショック後の規制強化で安全とみられてきた大手銀行さえもリスクが潜んでいることを浮き彫りにしたが、さらに厄介な問題が浮上している。

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