今期ドラマの「個人的ラズベリー賞」を発表 視聴を断念せざるを得なかった残念な2作品は?

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 今期の残念な作品をまとめて「潮的ラズベリー賞」を発表。ま、趣味の問題ね。

 まずは最後まで見届けようと思ってはいるものの、気がそがれておる2作品を。

●生き残る人が最初からわかっちゃった「ダ・カーポしませんか?」(テレ東)。そりゃあ、ジャニーズ事務所の伊野尾慧と、貫禄が名取裕子級になってきた観月ありさが、まず死ぬわけないじゃん、どうせ最後まで残るんでしょと。たとえ秋元康が仕掛ける悪趣味な殺人ショーでも、事務所政治力と番手の論理が丸見えで。

 ただし、武田鉄矢がいい。嫌悪感たっぷりの悪役もいいんだけど、今回の鉄矢はどこかジワる。けれん味よりも下請けの哀れみを装う感じがいい。鉄矢の正体も含め、最後が気になってはいる。

●警察がポンコツすぎやしまいか「大病院占拠」(日テレ)。「うっそだろ」とテロに巻き込まれる刑事の櫻井翔、使命感と責任感はあってもアクションが微妙。ソニンの司令官っぷりは滑舌よくていいと思うんだけど、警察組織そのものがポンコツすぎる。覆面テロリストの鬼たちの役者を、回を追うごとにお披露目&チラ見せして推理を促すも、いや、青はわかっちゃったよね、唇で。復讐する鬼の皆さんに感情移入させる策は成功していると思うが、銃撃戦の迫力のなさったら。中途半端なクライムアクションにはバラエティー番組感がにじみ出てしまうのよね。

 次に、途中で視聴を断念してしまった2作品を。まだハードディスクに残っているが、再生のボタンを押す気にどうしてもなれない。

●奇跡の連続、運・才能・人脈、すべてに恵まれた勝ち組女子が我が道を突っ走る「夕暮れに、手をつなぐ」(TBS)。ヒロインの広瀬すずは、婚約者や母に捨てられたというダメージはあっても、つるんとして表面的。心はざらつかない。そして、人生を生き延びるスペックをすべて持っている運びに、白目をむいてしまった。イケメン作曲家の永瀬廉と出逢い、フリーダ・カーロのような容貌の超絶資産家・夏木マリに拾われる幸運、ファッションの世界であっという間に称賛される才能。そりゃ妙な九州弁も絶対に直さないわな。こんだけかわいければ、己を卑下することもないわな。

 ただ、すずと廉のなにげない会話に、思慕がにじみ出るシーンはすごくいいと思うのよ。愛に発展する前段階の過程、ユニット名の由来を話して手に触れるシーンとか、タイトルを体現するシーンとか。余白と非言語の場面は秀逸なラブストーリーなのに、都合良すぎる設定やドタバタ成功譚がその価値を下げてしまった。

●そして、ラズベリー大賞は、まったなしで視聴を断念した「警視庁アウトサイダー」(テレ朝)だ。令和でも指折りの残念っぷり。これだけの名優がことごとく上滑りする作品はそうそうない。シリアスな役どころの濱田岳の表情はよしとして、西島秀俊と上白石萌歌が茶番を展開。視聴者おきざりの絵作りに怒りさえ覚え、そっとリモコンの停止ボタンを押した。ワースト。

 来期はラズベリー賞ノミネート作品が減りますよう。

吉田潮(よしだ・うしお)
テレビ評論家、ライター、イラストレーター。1972年生まれの千葉県人。編集プロダクション勤務を経て、2001年よりフリーランスに。2010年より「週刊新潮」にて「TV ふうーん録」の連載を開始(※連載中)。主要なテレビドラマはほぼすべて視聴している。

週刊新潮 2023年3月23日号掲載

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