【日韓首脳会談】尹錫悦大統領が最初に読売新聞のインタビューを受けた重大な意味

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次回の首脳会談は尹大統領のメンツを立てる番に

 実は、韓国のマスコミと国民には、天皇と首相がこれまで何度も「謝罪」を表明した過去についての記憶がない。韓国の新聞・テレビがそれを報じないから、「徴用工問題での謝罪」が一般国民の感情になっている。

 岸田首相はこの問題について「歴代内閣の立場を引き継いでいる」と述べた。「立場」とは、過去の歴史について「お詫びの気持ち」を表明したという事実だ。この際に「歴代内閣の『おわび(謝罪)』を引き継いでいる」と述べれば、尹大統領のメンツも保たれ韓国メディアも「謝罪を確認した」と報じただろうが、岸田首相の発言に尹大統領のメンツを立てる配慮と韓国マスコミへの意識はなかった。

 とにかく「謝罪」はもちろん「おわび」の言葉も使いたくないという、日本政府や自民党保守派議員の意向がにじみ出ていた。尹大統領にとっては、やや「メンツ」を失った訪日結果であった。

 日韓首脳は共に酒豪として知られる。会食後の二次会では、尹大統領が好きなエビス・ビールと日韓の焼酎を飲み交わし、信頼を深めた。ビールに焼酎を混ぜる韓国式の「爆弾酒」も飲み交わした。

 東京での日韓首脳会談では、尹大統領が岸田首相のメンツを立てた。ソウルで行われる次回の首脳会談は、岸田首相が尹大統領のメンツと大義名分を立てる番にしてほしい。

 慶応義塾大学で17日に行われた尹大統領の講演では、学生との質疑応答の際に、取材記者たちが会場から出された。誰の意向かわからないが、民主主義と学問の自由の否定と批判される。大統領に恥をかかせた。

重村智計(しげむら・としみつ)
1945年生まれ。早稲田大学卒、毎日新聞社にてソウル特派員、ワシントン特派員、論説委員を歴任。拓殖大学、早稲田大学教授を経て、現在、東京通信大学教授。早稲田大学名誉教授。朝鮮報道と研究の第一人者で、日本の朝鮮半島報道を変えた。著書に『外交敗北』(講談社)、『日朝韓、「虚言と幻想の帝国の解放」』(秀和システム)、『絶望の文在寅、孤独の金正恩』(ワニブックPLUS)など多数。

デイリー新潮編集部

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