今度は「半導体」で日本を騙す韓国 来日の尹錫悦が繰り出した必死の作戦

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「尹錫悦氏はいい人」

――岸田首相はまた、騙されるのでしょうか。

鈴置:分かりません。興味深いことにネット上では「またキシダを騙しに来た韓国大統領」への警戒感が根強い。

 一方、産経新聞を除き、新聞やテレビなどでは「尹錫悦氏はいい人」「日韓協力体制の復活」といった楽観的な空気が目立ちます。既存メディアは耳元で日本の役所や韓国政府のプロパガンダを聞かされるからでしょう。

 朝日新聞は社説「日韓首脳会談 新たな協力築く一歩に」(3月17日)で「経済安全保障の枠組みを新設することでも合意した。半導体生産などそれぞれ強みを持つ分野で対抗しあうのではなく、協働する。そんな新次元の関係を多方面で目指してほしい」と主張しました。

 日本は素材の対韓輸出規制を止めよ――韓国に対する武器を捨てよ、と説いたのです。韓国が西側に戻るかは怪しいというのに。

 日経の「半導体供給網、確立へ道 関係修復で対中包囲網」(3月17日)は以下のように解説しました。

・日韓の協業は米国の思惑にも合致する。米中対立が激しくなる中、米国は半導体の生産や調達を友好国などに移す「フレンドショアリング」を進めようとしている。経済産業省内には「輸出管理の問題があるうちは韓国との連携は打ち出しにくい」との声が根強かった。
・水面下では日本と米国、韓国、台湾の4つの国・地域の半導体分野の強みを生かして協力を進める「CHIP(チップ)4」と呼ぶ構想がある。対中国の半導体包囲網の構築に弾みがつく。

「日韓の協業は米国の思惑に一致する」と断じるのは危険です。中国との腐れ縁を維持する韓国に対し、米国が不信感を強めているのはすでに申し上げた通りです。

 ちなみに、韓国政府はCHIP4から逃げ回っています。半面、供給網の安定を図る目的で中国政府と協議体を作りました。韓国が対中半導体包囲網に入るつもりなど全くないのは、これを見ても明らかです。

韓国は中国に立ち向かわない

 お花畑を夢見る日本人を、米国の東アジア専門家は冷ややかに見ています。日経の「安全保障どう変わる 日韓首脳会談、有識者の見方 中国念頭の協力は限定的」(3月17日)で、米ランド研究所のJ・ホーナン(Jeffrey Hornung)上級研究員は次のように語りました。

・韓国にとって中国は敏感で厄介な存在といえる。米国は中国を「脅威」、日本は「挑戦」と位置づける。韓国が公の場で同様の言葉を使う準備はできていない。
・韓国政府の人たちは中国問題の議論をためらう。台湾についても語りたがらない。経済的な結びつきの強さから、対中国を意識した安保協力は限定的になる。少なくとも対北朝鮮ほど早くは進まないはずだ。

 韓国が反中同盟に入るなどと安易に期待してはならぬ――と岸田首相と日本人を諭したのです。

鈴置高史(すずおき・たかぶみ)
韓国観察者。1954年(昭和29年)愛知県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒。日本経済新聞社でソウル、香港特派員、経済解説部長などを歴任。95~96年にハーバード大学国際問題研究所で研究員、2006年にイースト・ウエスト・センター(ハワイ)でジェファーソン・プログラム・フェローを務める。18年3月に退社。著書に『韓国民主政治の自壊』『米韓同盟消滅』(ともに新潮新書)、近未来小説『朝鮮半島201Z年』(日本経済新聞出版社)など。2002年度ボーン・上田記念国際記者賞受賞。

デイリー新潮編集部

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