佐々木朗希の好不調を簡単に見抜けるバロメーターとは 打たれる時は何がダメ?(小林信也)

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 WBCで佐々木朗希(千葉ロッテ)が国際舞台にデビューする。果たして、世界を震撼させる投球を見せてくれるだろうか。

 本稿を書いている2月下旬の練習内容を見る限り、「今年は好調、WBCでの大活躍が楽しみだ」と感じる。だがまだムラがある。“いい時の佐々木”がマウンドに上がれば楽しみだが、“悪い時の佐々木”になってしまうと不安……。

 プロ野球経験のない私がプロの評論家を差し置いて語るのはせんえつだが、専門家たちがあまり指摘しないバロメーターがある。その基準を紹介しながら佐々木朗希の成長と変化、他の投手も含めた好不調の見分け方に光を当てたい。いい時の佐々木と打たれる時の佐々木は何が違うのか?

 完全試合を達成した昨年4月10日のオリックス戦、最後まで佐々木は完璧だった。「絶対に打たれそうにない」という空気に満ちていた。エラーの心配はあったが、佐々木の投球には隙がなかった。何しろバットに当てることさえ難しかった。6年連続3割を超え、今季からMLBに渡る吉田正尚でさえ3三振、打てる感じがしなかった。吉田は試合後こう語っている。

「完全に相手が上だったと思います。(軌道と)接点がなかった」

 8回まで無安打無走者に抑えた1週間後の日本ハム戦も同様に完璧だった。

“エイッ”は打ちやすい

 ところが6月3日、交流試合の巨人戦で佐々木は岡本和真に苦も無くセンター右に2ランを打ち込まれる。打った岡本もさすがだが、この時の佐々木には「打ちやすい要素」があった。

 何が違ったのか?

 完全に抑えた2試合の佐々木は「恐ろしく早い」。そして岡本に打たれた日は凡庸だ。それは「高く上げた左足が地面に着いてからボールを離すまでの間隔」だ。完全試合の時は極端に短い。足を着いた次の瞬間には右手が前に出てボールを投げ出している。打者にすれば、予測をはるかに超える早いタイミングでボールが向かってくる感じだ。

 岡本に打たれた佐々木は、左足を着いた時まだ右腕が頭の後ろに残っている。足を着いてから下半身の踏ん張りを利用して、エイッと投げ込む感覚だ。この違いは、注目して見ると肉眼でもはっきり認識できる。

 実は日本の野球界ではずっと後者の方が正しい投げ方だと信じられてきた。そのせいか佐々木も、うっかりすると間が長くなる。スタンドのファンが掲げているタオルには、右腕を大きく後方に伸ばすイラストが描かれている。それが佐々木を象徴するイメージだった。翼を広げる鳥のようで格好いい。だが、それでは打ちやすいのだ。

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