リアル店舗“撤退”でも急成長 “同人コンテンツ”の総本山「とらのあな」トップが明かす業績絶好調の理由

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快進撃を続けるFantia

 ファンティアはイラストレーターや漫画家、コスプレイヤー、VTuberなどが創作活動に必要な資金を獲得する場を提供したプラットフォームだ。サイトを訪れたユーザーが気に入ったクリエイターの商品をオンライン上で購入するなどして支援が成立する仕組みになっている。

「ファンティア事業が始まったのは16年ですが、当初は国内に同種のプラットフォームはなく、認知されない時期も続きました、私たちは創業時、“同人誌はイベントがあれば売れるけど、それ以外では売る場所がない”といった声を多く聞き、だからこそ常時、販売の場を提供できるリアル店舗を立ち上げた経緯がある。ファンティアも同じ発想で、幅広いクリエイターたちの活動継続が可能となるシステムの構築を目指しました」(鮎澤氏)

 一方、ファンにとってもコロナ禍でイベント等がなくなり、その場でのグッズ購入など“推し”を物理的に支援する機会が激減。それをデジタル上で可能にしたのがファンティアだったという。

 ファンティアの累計登録クリエイター(ファンクラブ)数は41万、ユーザー数も前年比163%の750万人(22年度)にのぼる。クリエイターの約4割を占めるのはイラストレーターや漫画家とされ、これにコスプレイヤーを加えたジャンルが「ファンティアの成長を牽引している」(鮎澤氏)という。

世界市場を狙う

 これまで店舗事業に回していたお金をファンティアなどの成長分野に振り向けつつ、一方で現在、海外クリエイターやファンの取り込みにも力を入れているという。

「ファンティアに登録しているクリエイターの2割程度は海外に住む外国籍の人たちです。日本のアニメなどに影響を受けたイラストレーターや漫画家は北米を中心に多くいて、彼らへの支援も滞りなく行うため、すでに英語や中国語などに対応した仕様に変更しています」(鮎澤氏)

 世界に目を向けるとファンは膨大な数にのぼるため、一見“前途洋々”のようにも映るが、気懸かりな点もあるという。

「市場が拡大している反面、肝心のクリエイターの創作環境が厳しさを増しているのが最大の懸念材料です。コロナ以降、紙の値段が上昇し、たとえば同人誌をつくるハードルなどが高くなっている。また電気代の高騰も多くのクリエイターを悩ませています。私たちの掲げるビジョンは“クリエイターのファミリーになる”こと。これまでと違ったアプローチで彼らを支援する方法を模索している最中です」(鮎澤氏)

「同人」という日本カルチャーは世界にどこまで広がるか。

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