WBCの“世紀の誤審”だけではなかった…「世界の王貞治」渾身の猛抗議

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“疑惑の判定”に怒りを爆発

 第5回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)が3月8日に開幕した。連日の熱戦の速報とともに、懐かしい過去の大会の名場面も再びクローズアップされている。【久保田龍雄/ライター】

 そんななかで、2006年の第1回大会2次ラウンド、日本対米国で、8回の西岡剛のホームインが、「(タッチアップの)離塁が早い」として覆された直後、王貞治監督が口角泡を飛ばして猛抗議を行ったシーンは、今も多くのファンの脳裏に焼き付いている。

 ふだんは温厚なイメージの強い王監督だが、グラウンド上では激しい一面を披露することも少なからずあり、ソフトバンク監督時代にも何度となく猛抗議を行っている。

 WBCの米国戦同様、“疑惑の判定”に怒りを爆発させたのが、2005年5月14日の中日戦である。先発・和田毅が6回まで無失点の好投で2対0とリードしたソフトバンクだったが、7回2死、福留孝介が右翼に放った大飛球が試合の流れを変えてしまう。

 打球はフェンスの最上部付近に当たったあと、跳ね返ってきたように見えた。佐々木昌信一塁塁審も「インプレー」をジャッジし、福留は三塁まで進んだ。

 ところが、中日・落合博満監督が抗議すると、審判団は集まって協議した結果、判定をホームランに変えたのだ。

「我々は命がけでいい試合をやっている」

 当事者の佐々木塁審は「跳ね返り方が微妙だったので、落合監督の抗議の前に集まって協議した。落合監督の言い分は聞いていません。ボールがフェンスに当たって、ワンクッション浮いた感じだった」と説明した。

 だが、VTRでは、打球はフェンスを越えていないように見え、ライト・柴原洋も「入っていないから一生懸命追いかけているのに」と主張した。そして、王監督の激しい抗議も却下され、三塁打が本塁打に化ける珍事となった。

 福留の“判定本塁打”で1点差に追い上げた中日は、8回に2対2と追いつくと、9回2死満塁から井端弘和が左前にサヨナラ打。皮肉にも疑惑の判定が中日の逆転勝利につながった。

 不利な判定のとばっちりを受ける形になった王監督は試合後も「我々は命がけで交流戦でいい試合をやっているが、審判がいいジャッジをしないのではしょうがない」と怒りがさめやらず、翌日の試合前も「(審判の)顔見たら文句を言いたくなるから、絶対に行かない」とメンバー表交換の立ち合いを拒否した。

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