【放送法問題】先進国で政府がテレビを監視しているのは日本だけ…本来論じられるべき3つの問題

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「政府がテレビ局を監督する」という歪んだ仕組み

 放送法をめぐる与野党の議論はほかの先進国からすると、完全に周回遅れの話なのだ。野党は「総務省がテレビ局を監督する奇怪さ」を真っ先に問題視すべきなのである。新聞報道もそうだ。

 ただし、その声を上げにくい事情が新聞と民放にはある。海外先進国には独立放送規制機関がある一方で、新聞とテレビ局が同一資本で結びつくクロスオーナーシップを禁止または制限している。朝日新聞とテレビ朝日、読売新聞と日本テレビのような関係はあり得ないのだ。

 独立放送規制機関はテレビ局への政治の介入を許さぬだけでなく、ほかの報道機関がテレビ局に影響力をおよぼすことも認めない。テレビ局の独立性が損なわれるからである。独立放送規制機関が生まれたら、現状のクロスオーナーシップ制度は許されない。

 そもそもクロスオーナーシップは視聴者に不利益をもたらす。報道や言論の多様化の妨げになるからだ。事実、在京キー局5局と系列新聞は論調がほぼ一緒で、グループのマイナスになることはまず報じない。これでは報道や言論の幅が狭まる。また新聞は系列民放の不利益に繋がるNHKの業務拡大には猛反対する。

「政府がテレビ局を監督する」という歪んだ仕組みが許され続けた責任の一端は、新聞と民放にある。クロスオーナーシップに踏み込まれることを好まない新聞と民放は、独立放送規制機関の必要性を強く訴えなかった。海外先進国の実情を報じることすら少ない。

 一方で、テレビ局の監督を続けたいであろう政府が、独立放送規制機関の設立を呼び掛けるはずがない。これでは独立放送規制機関を望む世論は生まれない。その存在すら、あまり知られていない。

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