ロシア軍、戦車大量損失の陰にウクライナ軍の電動自転車「アトム」、日産「ナバラ」の活躍…世界が驚いた技術力とは

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日産車が活躍

 兵器に活用されている民生品を具体的に挙げると、日産のピックアップトラック、Eバイク、そして民生用ドローンと3Dプリンターだという。順を追って見ていこう。

「1980年代、アフリカで起きたチャド・リビア紛争では、戦争の後半になると政府軍も反政府軍もトヨタのピックアップトラックを戦場に投入し、欧米メディアは『トヨタ戦争』と大きく報道しました。トラックの荷台に重機関銃、対戦車や対空のミサイルを積めば、相当な戦力になることが証明されたのです」(同・軍事ジャーナリスト)

 戦車の購入には億単位の予算が必要だが、トヨタ車なら数百万円で済む。おまけに耐久性に優れ、整備も簡単だ。“兵器”としても実力が評価され、アフガニスタンやシリアの内戦でも活躍した。

「ウクライナ軍は日産車を活用しています。2021年まで日産がスペインで現地生産を行っていたこともあり、ウクライナはピックアップトラックの『ナバラ』を救急車などに採用していました。ロシア軍が侵攻してくると、ナバラは最前線で抵抗するウクライナ兵の貴重な足となっただけでなく、荷台に多連装ロケット砲を搭載してドローンを迎撃するなど、ロシア軍から戦果もあげています」(同・軍事ジャーナリスト)

Eバイクの大活躍

 Eバイクではウクライナのイリーク社が製造する「アトム」が大活躍しているという。

「日本でEバイクと言えば、『電動アシスト付きのスポーツバイク』という印象が強いでしょう。ところがアトムはペダルが付いているとはいえ、漕がなくても最大時速90~100キロで走ります。電動自転車と言うより電動バイクのほうが実情に近いのです。おまけにアトムはオフロード仕様なので戦場の悪路を苦にしません。ニューズウィーク誌の報道によると、イリーク社が在庫を軍に無償提供すると、たちまち兵士から高く評価されたそうです(註2)」(同・軍事ジャーナリスト)

 Eバイクはモーターで動く。そのためオートバイより走行音が小さく、高熱を発するエンジンがない。ロシア軍の兵士やドローンに、音で位置を割り出されたり、熱源センサーで探知されたりするリスクが減る。

 最初は偵察や伝令に使われていたが、しばらくすると荷台に対戦車ミサイルNLAWを乗せて運搬できることが分かった。

 ウクライナ軍がロシア軍の戦車を発見すると、兵士はアトムで射撃地点に向かう。現地でNLAWを下ろし、身を隠して発射。その場からアトムで迅速に離脱し、身の安全を守るというわけだ。

「驚くべきことに、ウクライナ軍はアトムに乗っていた兵士から改善点を募り、イリーク社に特注モデルの製造を依頼しました。ポイントはバッテリー容量の増大です。容量が増えたことで走行距離が伸びただけでなく、兵士が携帯するパソコンやタブレットの充電も可能になりました。NATOの支援を受けるウクライナ軍はIT化を急速に進めており、最前線でも電源が必要です。そのため、塹壕にEバイクがあると大助かりなのです」(同・軍事ジャーナリスト)

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