タモリ倶楽部終了 40年間他の番組なら無理な企画が成立した3つの理由

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成立できた3つの理由

 いわば、ほかの番組では成立しないはずのものがなぜか成立していた。それができた理由は大きく分けて3つ考えられる。1つは、言うまでもなく、企画・演出を手がけてきたスタッフの尽力によるものだ。もう1つは、企画を支えてきた特定分野の専門家や趣味人の活躍である。そして、最後の1つは、タモリという絶対的な「ご本尊」の存在である。

 そこにタモリがいるからこそ、狭い企画が狭いままで終わらなかった。タモリは多趣味であり、博識であり、どんなものにも独自の視点を見出し、それを面白がることができる。彼は物事を楽しむことの天才なのだ。そして、タモリが楽しそうにしている姿を見て、視聴者である私たちもそれを自然に受け入れられた。

「タモリ倶楽部」終了の理由について、テレビ朝日側は「番組としての役割は十分に果たしたと総合的に判断した」と述べている。ただの決まり文句ではあるのだが、この番組について「役割」という言葉が使われるのは不思議な感じがする。なぜなら、「タモリ倶楽部」とは、いかなる社会的な意義も役割もないものを紹介して、それを楽しむ純粋な娯楽番組だったからだ。

 この番組には、無意味という意味があり、無意義という意義があった。テレビというメディアにあった「遊び」の要素がまた一つ失われてしまうことは残念でならない。

ラリー遠田
1979年、愛知県名古屋市生まれ。東京大学文学部卒業。テレビ番組制作会社勤務を経て、作家・ライター、お笑い評論家に。テレビ・お笑いに関する取材、執筆、イベント主催など多岐にわたる活動を行っている。お笑いムック『コメ旬』(キネマ旬報社)の編集長を務めた。『イロモンガール』(白泉社)の漫画原作、『教養としての平成お笑い史』(ディスカヴァー携書)、『とんねるずと「めちゃイケ」の終わり 〈ポスト平成〉のテレビバラエティ論』(イースト新書)、『逆襲する山里亮太』(双葉社)『お笑い世代論 ドリフから霜降り明星まで』(光文社新書)など著書多数。

デイリー新潮編集部

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