上海のスーパーで娘を連れ去られた日本人 直ぐに発見されたものの我が子と全く分からなかったワケ【元公安警察官の証言】

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自分の娘ではない

 10年前にも日本人の子どもの誘拐未遂事件があった。

「上海市の『カルフール』というフランス資本のスーパーマーケットで、日本人の30代の女性とその娘さんがショッピングをしていました。女の子は小学校低学年で髪が長く、後ろに垂らしていました」

 母親は化粧品を選んでいたため、数分間、娘から目を離した。

「母親が彼女を振り返ると、娘がいません。慌てた彼女は、店員に娘がいなくなったことを伝えました。店員はすぐに無線でガードマンに連絡、ガードマンの一人がスーパーマーケットの敷地内にいた不審な女に連れられ、泣いている女の子を見つけました。これは怪しいと『その子はあんたの娘か?』と問い質したそうです。女はそうだと答えましたが、女の子は助けを求めるようなそぶりをするので、母親をその場に呼んだそうです」

 ところが、母親は最初、自分の娘ではないと思ったという。

「女の子の髪がバッサリ切られていたからです。娘から『お母さん』と言われて、初めて自分の子だとわかったそうです。それにしても、僅か数分の間に髪を短く切ってしまうのですから、恐ろしい偽装工作ですよね。遠くから見ただけでは絶対自分の娘とは思わなかったはずです」

 子どもは一人、50万円から100万円で売られるという。

「河北省では2012年から2020年までの8年間で、実の子ども5人を次々に売却した男性が逮捕されましたが、5人で約18万元(約320万円)の利益を得ていたそうです。中国では、自分の子どもを売る親もいるのが現状で、人身売買の問題は根が深いと思います。中国で暮らす日本人は、街を歩く際、自分の子どもから目を離さないよう気を付けるべきです」

勝丸円覚
1990年代半ばに警視庁に入庁。2000年代初めに公安に配属されてから公安・外事畑を歩む。数年間外国の日本大使館にも勤務した経験を持ち数年前に退職。現在はセキュリティコンサルタントとして国内外で活躍中。「元公安警察 勝丸事務所のHP」https://katsumaru-office.tokyo/

デイリー新潮編集部

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