サウジ遠征で一撃13億円! 人気薄の馬が大活躍の裏にスター調教師の存在

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競争馬に大人気の“矢作塾”

 馬がどの厩舎の所属になるかは、出資する一口馬主にとって重要な判断材料になるのだそう。

「矢作厩舎に入ることを売り文句にする馬は多いですね。そのおかげで矢作厩舎の人気が高くなりすぎて馬房に馬が入りきれず、なかなかデビューできない馬もいるほどなんです。

 戦績に応じて多少増えるものの、一つの厩舎に所属できるのは75頭ほど。そのうち、馬房に入って調教を受けられるのが30頭ほどです。あぶれてしまった馬は育成牧場などに戻されて出番を待つことになります」

 調教師と馬の関係は、競馬に詳しくない人向けに説明すると、人間界でいう「塾講師と生徒」の関係に例えられるそう。

「例えるなら、人気進学塾の塾講師ですね。いろんな教え方の先生が教えていて、馬主=親、馬=子供です。でも教室の机の数には限りがある。子をどこの塾に通わせるかで成績が左右されますから、親も必死なわけです」

海外競馬ならではの特殊事情

 ところで今回のレース、13頭出走のうち6頭を日本馬が占めていたのも面白い。

「日本馬が多いのは、好条件で招待されているからです。通常海外のレースでは登録料だけで数百万円が必要ですが、サウジカップは登録料・出走料がともに無料。オーナーや厩舎関係者の渡航・滞在費、馬の輸送費も主催者負担のためノーリスクで出走できるのが大きい」

 と解説するのは、海外競馬の事情通。

「しかもこの時期、欧州はまだオフシーズン。一線級の馬は出てきません。超一流の日本馬でなくても勝てる可能性があるのです」

 もちろんパンサラッサは決して弱い馬ではなく、有力馬ではあるが、今回の大勝利は「カリスマ調教師」と「海外競馬ならではの特殊事情」、そして「アラブのオイルマネー」とがうまくかみ合った結果といえよう。

「稀代の逃げ馬」として歴史に名を残すことになりそうなパンサラッサ。

 競馬ファンの夢を乗せた圧巻の疾走だった。

週刊新潮 2022年3月9日号掲載

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