唐揚げブームの終焉 ワタミの失敗を専門家は「興味深い。専門店はタピオカと同じ運命を辿る」

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成果を焦ったワタミ

 物価高で消費者は財布の紐を固くしている。だからこそ、ハレの外食となると高級志向が強まるのだという。

「久しぶりの外食ですし、普段は電気代の高騰など家計のやりくりに悩まされているからこそ、『どうせ外食するのなら高額でもいい。美味しいものを食べたい』というニーズが高まっています。インフレ率に追いついていないとはいえ、賃上げが行われているのも大きいでしょう。そもそも日本人は外食の“経験値”が高く、味の分かる消費者が多いことも指摘できると思います」(同・千葉氏)

 改めて唐揚げを考えてみると、ブームの理由は低価格とテイクアウトとの相性にあった。今、消費者が求めているものとは正反対だと言っていい。

「興味深いのは、外食産業では大手のワタミが手がけた、『から揚げの天才』の失敗です。ワタミはコロナ禍の直撃を受け、売上減に悩まされていました。さらに渡邉美樹氏(63)が2019年に参議院議員の任期満了を迎え、経営に復帰することも既定路線でした。どうしても“成果”が必要だったのでしょう。ブームが起きると、急いで唐揚げ専門チェーンの経営に乗り出しました」(同・千葉氏)

商品開発に立ち遅れか

 一時期、「から揚げの天才」が成功を収めたことは事実だ。ワタミは「飲食企業最速の2年7カ月で100店舗を達成」と盛んに宣伝していた。

「しかしブームの終焉が近づくと、消費者をつなぎ止めておくことができなくなりました。基本的に小さな唐揚げ専門店が閉店に追い込まれている中、大手のワタミが後退したのは珍しいとも言えます。ワタミが安易に時流に乗ってしまい、『から揚げの天才』でしか食べられない、独自性が高い唐揚げの商品開発に遅れていたことが原因の一つとして挙げられるでしょう」(同・千葉氏)

 外食産業の各社が失敗事例から教訓を学ぶ際、「から揚げの天才」の盛衰は格好の“教材”だと言えそうだ。

デイリー新潮編集部

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