唐揚げブームの終焉 ワタミの失敗を専門家は「興味深い。専門店はタピオカと同じ運命を辿る」

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ブームの終焉

 春水堂やGong chaと同じように、ブランドを確立しているケンタッキーフライドチキンの不人気は全く考えられない。スーパーの惣菜やコンビニ弁当、テイクアウト弁当で唐揚げの人気も揺るがないだろう。

「今、猛烈な淘汰が起きているのは、ブームを当て込み安易に出店した唐揚げ専門店です。タピオカと同じように、駅近くの空き物件に出店した専門店があるでしょう。時流に乗っただけで、それほど美味しいわけでもなく、地域住民の人気や信頼を獲得できなかった店が閉店に追い込まれていると考えられます」(同・千葉氏)

 2020年11月に朝日新聞が掲載した「唐揚げ専門店、急増中 サクッと出店可能・コロナで持ち帰り需要増」の記事は、現状を踏まえて読み返すと大変に面白い。

「朝日新聞によると、唐揚げ専門店の出店には、フライヤーと冷蔵庫くらいしか必要ないそうです。初期費用は約700万円で済み、これは一般的な飲食店の3分の1。さらに、調理の難易度も高いわけではなく、アルバイトでも担当できます。唐揚げブームが到来すると、雨後の筍のように専門店が乱立した理由がよく分かる記事になっていました」(前出の記者)

高級店志向のワケ

 そもそも唐揚げがブームとなった要因は、新型コロナの発生が大きい。前出の千葉氏によると、「コロナ禍における消費者のニーズ」に唐揚げはぴったりフィットしたという。

「当時は巣ごもりが求められて外出ができませんでした。唐揚げをテイクアウトすれば、家族は晩ご飯のおかずに、お父さんは家飲みのつまみにできます。単価が安いので、オンラインフードデリバリーで配達料が加算されたとしても、手頃な価格帯に収まりました。あっという間に『Uber Eatsで唐揚げを取り寄せて家族で食べる』というライフスタイルが定着したのです」(前出の千葉氏)

 ところが“ウィズ・コロナ”の時代となるにつれ、外食産業のトレンドは変わってしまったという。

「消費者の間に『久しぶりに外食を楽しみたい』という気運が高まった結果、相応に高級な店を選ぶ動きが顕著です。鶏肉で言えばクオリティの高いブランド地鶏を使い、客単価が7000円から8000円という焼鳥店が人気を集め、新規出店も盛んです。世帯年収が1000万円を超えるような高所得者層だけでなく、600万円から900万円という中流階級層も喜んで来店しているのです」(同・千葉氏)

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