【舞いあがれ!】最終回まであと1か月 IWAKURAの「笠やん」をなぜ最大級のヒーローにしたのか

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 NHK連続テレビ小説「舞いあがれ!」の放送が残り約1カ月となった。脚本家兼歌人として初めて朝ドラに挑んだ桑原亮子氏(42)は何を訴えようとしているのか。ヒロイン・舞(福原遥[24])はどこに着地するのだろう。

最大のキーワードは「回り道」

「舞いあがれ!」のテーマとメッセージを読み解く最大のキーワードは「回り道」である。さらに普通の人々の美しさ、学歴偏重の風潮への反発を訴えかけている。

 ヒロイン・岩倉舞が回り道をしたのは説明するまでもない。18歳だった2004年に浪速大学航空工学科に入学したものの、人力飛行機サークル「なにわバードマン」で大空を舞う魅力に目覚め、翌05年に中退。航空学校に入った。

 同校修了後の2008年、22歳で博多エアラインから就職の内定を得たが、リーマン・ショックによる景気低迷によって入社が延期になる。

 その間、家業のねじ工場・IWAKURAを手伝っていたところ、敬い慕っていたお父ちゃん・浩太(高橋克典[58])が急逝。舞はお母ちゃん・めぐみ(永作博美[52])を支え、浩太が残した工場を守るため、内定を辞退した。

 兄・悠人(横山裕[41])や航空学校の同期で交際相手だった柏木弘明(目黒蓮[26])から翻意するよう繰り返し説得されたものの、舞は意志を曲げなかった。その後、1度として後悔していない。

 もしも、舞がパイロットになり、浩太が苦労して大きくした工場が潰れ、その後始末をめぐみに任せっきりだったら、どうなっていたか。舞は途方もないくらい後悔していただろう。悔いのない人生を選んだという点では舞は正しかった。

 一方、悠人は悔悟した。浩太がケンカ別れしたままで逝ってしまったからだ。だからIWAKURAに出資し、苦境を救った。

 その際、悠人はめぐみに対し、「もし支払いが滞ったら、出ていってもらうからな」と憎まれ口を叩いたが、これは素直になれないキャラであるため。その証拠に自分のインサイダー取引が明るみに出そうになると、真っ先にIWAKURAの財産保全に走った。

 悠人の性根はやさしく、「はるとちゃん」と呼ばれていたころのままなのだ。だから金融商品取引法違反で執行猶予付き有罪判決を受けた後も、梅津のおっちゃんこと梅津勝(山口智充[53])ら周囲の態度は変わらなかった。悠人にとって、ファンドマネージャーの仕事は回り道だったのだろう。

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