語られない「障がい者の性欲」… YouTube出演で注目された、介助サービスの知られざる仕事内容

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気になる料金は

 そして場合によっては、小西さん、そして小西さんの考えに共鳴するボランティアスタッフが、相談者の対応をする。平均して月に20数件からの問い合わせがあり、そのうち10数人から直接のサービスの申し込みがあるそうだ。

「まず、サービスを行うことができるか、Zoom(ズーム)で話を聞きます。身体障がい者の方はご本人から問い合わせをいただくことが多いですが、知的障がいの方の場合はご家族を通じてご連絡をいただくことが多く、その場合にはご家族とも話をします。たとえば、性欲を発散する方法を知ってしまったことで、性加害を起こすリスクだってある。そういったことをご説明し、話し合います。本当は小さいころから施設や療育の場で性教育を学ぶ機会が必要なのですが、障がい児教育ではないがしろにされがち。ここにまた別の問題があるのですが……」

 カウンセリング代は1時間3,000円。そしてサービスを受ける場合には60分1万8,000円の料金を受け取る。交通費は別。サービスを提供する場所の割合は相談者の自宅かホテルが半々で、その場合にはホテル代も別途かかる。

 小西さんが出張となれば宿泊費の負担も生じるが、彼女が県外に行くことが月に3度もあると聞けば、いかに全国の障がい者が性介助を受けることが難しいかがうかがえる。これまで最も遠くて茨城県まで出張にいったことがあるそうだ。

きれいごとを言っておいて、結局なんだ金をとるのか、と思うだろうか。

「寄付を大々的に募って、その代わりにサービスを提供しては? というご意見もいただきます。けれどやっぱりサービスをする以上、料金をいただかないといけない。ボランティアではいけないと思うんです。その方が差別になる。一般の人と同じ扱いをして、初めて平等なのだと思っています。その一方で、障がい者年金で生活されている方も多く、あまり高いお金をいただくわけにもいかない。茨城の出張の際には複数のアポイントを詰め込むようにして、おひとりあたりに負担いただく交通費や宿泊費の負担を減らすようにしました」

 私も似たような活動をしているからわかるが、時には「ビジネス」として障がい者の性にまつわる世界に参入してくる輩がいる。が、長くは続かない。そんなに甘い世界ではないのだ。

 念のために書いておけば、小西さんらスタッフは、違法とされる性的なサービスは提供していない。5名いるというスタッフたちにも対応できるサービスに濃淡があり、手でのサービスのみ、服を脱ぐのはNGとさまざまだ。どういったサービスを求めているかはカウンセリングで打ち合わせをしておく。

 重度の障がいを持つ方の場合には、ヘルパーさんがシャワーやベッドにあがるまでを手伝い、それから小西さんの出番、となることもある。こうした人びとがうまく「する」ことができるのか、という疑問を抱く読者もいるかもしれない。

「ご自身が気持ちいい思いをすることが難しくても、女性を喜ばせることに喜びを感じる方もいらっしゃいますからね。これまでにサービスを提供された方は50人はいらっしゃるでしょうか。リピートいただく方も多くいらっしゃいます」

女性の障がい者にある、また別の問題

 ここまで触れてきたのは「男性の障がい者」にまつわる話だった。では女性の障がい者の場合はどうなるのか。結論からいえば「必要に応じて女性専門風俗を紹介することがあります」(小西さん)という。とはいえ経験がない方の場合、いきなり風俗は……となる割合は男性より女性が多いそうだ。風俗への距離感は健常者も障がい者も同じだろうか。

 近年、ようやく「女性の性欲」について公に語られるようになったように思う。そのうえで、障がいを抱える女性の性欲となれば、まだまだ、課題は多そうだ。

 本題とはややずれるかもしれないが、女性の障がい者をめぐる問題についてこの機会に書いておきたいことがある。知的障がいを抱える女性の性被害のことだ。

 そういった女性たちは、加害行為をされても、本人が何のことなのか理解できない場合も多々ある。肉親が「どうせ分からないだろう」と行為に及ぶという信じられない話も聞いたことがある。

 そして私が長年、取材してきた夜の世には深刻な「搾取」の問題がある。

 ある悪徳風俗店は、女性が知的障がいをもっていると知りながら雇い、働かせていた。そして“普通の”風俗嬢でもNGなプレイを強要するといった卑劣な行為に及んでいたのだ。ソースは不確かながら、あるセクシー男優が「セクシー女優には知的障がい者が多い」といった主旨の発言をしたとも聞く。職業差別をする気はまったくないが、あながち嘘でもないと私は感じる。

 そして女性の障がい者が性風俗店で働くことで、男性の障がい者ではできないやり方で「自立」できてしまうというまた別の問題もあるのだ。そこにあるのは、福祉とのかかわりよりも夜の世界のほうが彼女たちを「大事」にしている現実だ。この点は、

「同じ女として、当事者の生きずらさもそうですが、それを利用する夜職の人間がいることに落胆します」

 と小西さんもいう。

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