万引き多発で店舗閉鎖、国民の64%がその日暮らし…アメリカは格差社会から総貧困化時代へ

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「国民総貧困」時代

「万引き」が米小売店の経営上の問題になっていることも気になるところだ。

 日本でも書店などで万引きの被害が相次いでいるが、米国の規模は桁違いだ。

 米国の万引き被害は年間950億ドルに達すると言われており、小売業全体に深刻な影響を与えている。

 米国の小売大手ウォルマートのマクミロンCEOは昨年12月「万引きはこれまでになく増加している」と述べ、「万引きが減少しなければ、値上げや閉店せざるを得なくなる」と危機感を露わにした。

 大手スポーツ用品企業ナイキも今年2月「万引きが横行している」ことを理由にオレゴン州ポートランドにある歴史ある店舗の閉鎖を余儀なくされている。

 米国は「格差社会」から「国民総貧困」時代に入った感があり、「米国消費」の力強さは見かけ倒しの可能性があると言わざるを得ない。

 米世論調査会社ギャラップが2月8日に公表した調査によれば、米国人の約半数が「1年前より経済的に苦しい状況だ」と考えているが、約6割の米国人は今後の懐具合については楽観的だ。楽観論の支えは堅調な雇用市場だが、米国企業の減益基調が鮮明となり、高止まりする人件費の抑制を急ぐ動きが強まっている。

 全米企業エコノミスト協会の1月の景況調査によれば、米企業の約2割が「今後3ヶ月以内に人員削減などを実施する」としている。

 好調に見える米国経済だが、「一寸先は闇」だ。「ノーランディング」論はあまりに楽観的にすぎるのではないだろうか。

藤和彦
経済産業研究所コンサルティングフェロー。経歴は1960年名古屋生まれ、1984年通商産業省(現・経済産業省)入省、2003年から内閣官房に出向(内閣情報調査室内閣情報分析官)。

デイリー新潮編集部

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